学校法人 和田学園  認定こども園 青竜幼稚園

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前園長日記/和田節子ライブラリー

『思い出さがし』 121・子どもの居場所③

居場所を見つけられない子は遊びも転々として集中力がありません。どこへ行ってもゆったり遊びを楽しめないので、周りの子ども達から敬遠されてしまいます。それはその子のせいではありません。小学生でもしっかりスキンシップをとってあげると数ヶ月すると人が変わった様になります。M君が穏やかで安定感のある子に育ったのは家族の環境が素敵だったからです。両親や祖父母が口やかましかったり、指示命令をしすぎたり、怒ってばかりの中にいては子どもの心は安定しません。何でぼくだけを責めるのかと反抗心をむき出しにしてしまうか、逆に内にこもって自己表現をしなくなったり、いじけたり、妙に人の顔色を見てごきげんをとったりする子になります。大声のK君はそんな環境の中で育った子でした。余り笑顔のない父親と、すぐ大声で怒鳴る母親。そんな母親を自分の娘だからと遠慮なく罵倒する祖母のいる家庭で育ったのです。妹が産まれてから父親は娘にべったりになり、どこへでも連れ歩くようになり、祖母と父親の関係もぎくしゃくしています。K君は被害者だったのです。S子の優しさとM君の穏やかさに触れたK君は、担任にも甘えることのできる素直さを表現し始めました。私はできるだけK君に触れ抱っこして冬休みを迎えました。K君はM君の家でお泊まりすることになったのです。大おばあちゃんが嬉しそうにそのことを話し「いい子や。お手伝いもいっぱいしてくれた。ありがとうと伝えてください。」握りしめた大おばあちゃんの手は温かでした。

2014年05月30日 22:40

『思い出さがし』 120・子どもの居場所②

すばらしい影のリーダーだったM君のご両親は農家の方でしたが、祖父母と曾祖母のいる家庭で育ち、3人の男の子は時々家の手伝いをしながら小動物や植物に興味を持った子ども達でした。大家族の中で忙しい両親や祖父母の働く姿や、お互いに労る様子を見て育ったのでしょう。言葉が柔かくトゲトゲしさがありません。真ん中っ子のM君は寂しがり屋だったのでしょう。弟が生まれてからはずっと曾祖母の部屋に入っておしゃべりすることが多くなったようです。兄は3年生、弟は3才のやんちゃ盛りで、おばあちゃんとおじいちゃんが世話をしてくれているようです。弟に手がかかるのでM君は曾祖母(大おばあちゃん)のところが落ち着くようです。80才を越えた大おばあちゃんは、庭に花を植えたり菜園の野菜に水をやったりして、よく体を動かして色んなことを教えてくれるようです。その大おばあちゃんの一言一言がM君を成長させているのだと思います。「お前にいじわるをする子がいたら、それはお前をキライだからじゃないんだよ。仲良くなりたいからなんだよ。だから、わかったよ。ごめん、ゆっくり話してね。と言うんだよ。すぐ泣いたり、怒ったりしても相手と仲良くはなれんのだよ。」大おばあちゃんのようにゆったりと話してくれるM君を見ていると、こうした寛容さが落ちついて穏やかに周りを見られる子を育てているのでしょう。

2014年05月23日 23:55

『思い出さがし』 119・子どもの居場所①

子どもが居場所を見つけるのには大人の寛容さが大きく影響しています。周りを見てタイミング良く自分の定位置を決める子を見ていると家庭での様子が見えてきます。ある男の子は3人兄弟の真ん中っ子です。人の顔色を見るのは上手ですが決して卑屈ではありません。いつもニコニコしている女の子を見つけて、すぐ横で周りの子ども達を見ています。体が大きくて声もでかい4月生まれのK君は、何でもできる子ですが、すぐ思ったことを口にして、相手を傷つけることが多い子でした。ニコニコのSさんを気に入っているのでしょう。真ん中っ子のM君がSさんの横にいるのを面白く思っていなかったのでしょう。「M君はSさんと結婚するんやな。ほうやし、いつもくっついているんやな。」とみんなに聞こえるように騒ぎ出します。言われた2人は恥ずかしそうに離れようとします。それを力づくで止めるK君。困った顔のSさんを見てM君が言ったのです。「ごめんなSちゃん。Kちゃんの隣に行ってあげて。みんなSちゃんのこと大好きなんやし。」大声のK君には続く言葉がなかったのでしょう。自分の席に戻って憮然としていました。小学校に入ったばかりなのに相手にイヤな思いをさせまいとするM君は次の日、大声のK君と一緒に登校し「おはようございます。」と元気に挨拶です。M君はK君との距離を考え、クラスの副リーダーとしての役目も果たしたのです。

2014年05月16日 23:58

『思い出さがし』 118・新年度の初めに②

新年度が始まると沢山のやんちゃ坊主に出会います。その楽しいこと、面白いこと、こんな子に手をやくお母さんは本当に申し訳なさそうに頭を下げられます。「皆さんにご迷惑をおかけしてごめんなさい。申し訳ありません。何かあったら叱ってやって下さい。」そう言って先生方に頭を下げて帰られます。確かに気になるやんちゃをします。沢山叱られてやばいなという顔はしますが、10分もすると動き出します。先生の方をチラチラ見ながらですが…。幼稚園を卒園してお兄さんお姉さんになった1年生は、最初は幼稚園児のようにいきなりやんちゃはしませんが、この先生は(話がわかるな)とか(叱ってもこわくはないな)とか(むちゃをすると怒鳴られるかも)(小さなことにくどくどお説教をするな)とか感覚でかぎ分けるようです。幼稚園のころ大人しくて担任の手をやかせなかった子は、それなりに担任を知ろうとしてじっと見つめています。特に自己主張の強い子が先生から何と言われるのかしっかり見て、上手に自分の居場所をさがしていきます。数日するとやんちゃ坊主は少しずつやんちゃ振りを小出しにして反応を見ています。その様子をじっと見つめている大人しい良い子達は、やんちゃ坊主が否定されないのを見て肩の力を抜きます。子ども達の攻防は見ていてとても面白くて勉強になります。やんちゃ坊主はコミュニケーション力があるのでしょう。早くに自分の居場所を見つけ、どんどん仲間を増やしていきます。見事です。

2014年05月10日 11:08

『思い出さがし』 117・新年度の初めに①

お久しぶりです。インフルエンザA型から肺炎になりとうとう入院。意識を取り戻すのに3日ほどかかった様です。その間、夢を見ていました。沢山の子ども達が楽しそうに飛び跳ねていました。どの子も笑顔で、みんなピンクの雲の中で追いかけたり、抱きあったり、おしくらまんじゅうをしたりして、じっとしている子はいません。裸ん坊の赤ちゃんもヨチヨチ歩いたりハイハイしたりして、年上の子達の間を上手に動き回っていました。そのかわいいこと!泣き顔、怒り顔、困り顔、悲しい顔なんか1つもありません。ぶつかり合っても泣かず、上に乗られてもニコニコしている子達ばかりでした。和やかな雰囲気の中でふざけ合う幼子達のエネルギーがどんどん伝わって来ます。小川を渡り丘へ登り、小屋に入って井戸水を飲み、明るく笑って手をつないで野原を駆け巡る子ども達。それを包むピンク色の濃淡の雲は、私に大きな勇気をくれました。「みんな、おいで!」と両手を上げると、あちらからもこちらからも出てきてタッチしてくれます。私の出会った何千人の子ども達が、サッとタッチしてまた平和な群を作って広がって行くのです。あの時の風景はこれからの私の保育観を支え続けるとことと思います。子どもの愛情あふれる笑顔を大切にしたい新年度でもあります。

2014年05月02日 21:18

『思い出さがし』 116・たくさんの さようなら

3月に入ると少しずつですが春らしい柔らかな日差しが戻ってきます。桜の蕾がふくらんで、何となくわくわくして来るのですが、別れの時でもあり涙を流す日もあります。嬉しい合格発表に家族で大喜びをして、2週間後親元を離れて他県で一人暮らしを始める息子を持ったお母さんにしみじみ言われた言葉があります。「先生、親って別れの悲しさを体験するために子どもを生むのですね。」そう言って私の手を握りしめたお母さん。1つ違いの妹がいるご家庭では、次の年も同じことが起きると思っておられたのでしょうか。母親にとって息子の存在はきっと特別なものなのでしょうね。私は長女が早くから東京へ行きたがり、夏休みは東京の予備校に通っていたので覚悟はできていましたし、下に4人も妹や弟がいたこともあり、心配はしましたが悲しさはありませんでした。お母さんの手を握り返しながら「本当に別れの数と出会いの数の中で人の生命は流れて行くのですね。次の出会いを大事にしたいですね。」と言うのがやっとでした。息子さんを京都の下宿に送り届け、両親が金沢へ帰って来る車の中で母親は泣きっぱなしだったと聞き、立ち直るのに時間がかかるだろうと気が重くなりました。数日後、彼女から元気な電話がありました。「昨日息子のところへ行ってきました。部屋も綺麗で、ラーメンを作ってくれたんですよ。入学式は前日に行って、次の日は京都のごちそうを食べる約束をして来ました。また会えるって楽しいです!」別れがあるからこそ再会の喜びは大きいのですね。


いつも青竜幼稚園、青竜第二幼稚園のホームページを見ていただきありがとうございます。2月末より体調を崩してしまい療養しております。回復しましたらまた園長日記を再開します。しばらくお休みさせていただきます。よろしくお願い致します。
青竜幼稚園・青竜第二幼稚園  園長  和田節子

2014年03月08日 14:55

『思い出さがし』 115・表現会で学ぶもの④

小学校を前にして、自分の思いを声に出せる子になってほしいという先生の願いがその男の子(K君)に 届いたのでしょうか、日に日に声が出るようになりました。でもまだ1人では言えません。確か「あっ村の子ども達の元気な声が聞こえて来るよ。ぼくも行ってみたいな。」という内容のセリフだったと思います。最初に「あっ」という言葉を入れることで、次の言葉が出しやすいと考えた先生方の工夫が実ったのでしょう。大きな声で「あっ」と言えるようになりました。でもその次の言葉「村の」というセリフが急に小さくて消え入りそうになります。そこで先生の応援が入り、2人でゆっくり「村の子ども達の元気な声が聞こえて来るよ。」と続けました。周りの子ども達も大応援です。口をパクパクさせてセリフの応援です。先生とK君は、それに応えて大声を出し始めました。先生が演じている姿は上から目線ではなく、共に心を込めて語ったので、K君にはプレッシャーもかからず、どんどんお腹から声が出せるようになりました。時々練習する声が園長室まで聞こえる日があり、子ども達の自信に満ちた元気な声が嬉しいなと思う日が続きました。しばらく年長の練習を見ることなく本番を迎えました。私は幕間の司会をしながら年長の劇をドキドキして待ちました。劇中踊りの後「あっ」と言う声が聞こえ、K君を先頭に数人の子ども達が出て来ました。K君は堂々と背筋を伸ばし、1人でセリフを言い切りました。舞台横で先生が泣いています。私も涙です。こうして子どもは伸びて行くのです。

2014年07月28日 10:00

『思い出さがし』 114・表現会で学ぶもの③

いよいよ役決めの発表の日。先生もドキドキしますが、子ども達もワクワクドキドキです。絵本を見たり、物語を聞いたり、先生達が演じるのを見たりしているので、自分のやりたい役を決めている子が大半の様で、第1希望から第3希望まで用意されています。できるだけ第1希望を叶えてあげたいと先生達は苦労をしているのですが、その子の発達や成長に合わせたり、この子にこんな力をつけたいと思うと、本人の希望通りというわけにはいきません。今の子ども達は自己主張もしっかりしていて、演じることの大好きな子が多いのですが、30年前の子ども達は控えめでやりたい役があっても、どうしてもやりたいと主張して譲らないということはありませんでした。そのため、先生方はこの役はこの子にやってほしいと思って説得することもあったようです。ある日、当時年長組を担任していた若い先生が「園長先生、今どうしてもこのチャンスを生かして大きな声でこのセリフを言わせたい子がいるのですが、本人が1人では言いたくないと泣くのです。無視したらその子は傷つくでしょうか。」と相談に来ました。「どうしても言わせたい理由は?」と聞くと「いつも友人の言いなりになっている子に自信を持たせたいのです。自分は変われるというきっかけを小学校前に体験させたいのです。」先生の熱のこもった言葉が胸を打ちました。「じゃあ他の先生にも協力して頂いてやってみましょう。最初はやらせではなく、先生と一緒に頑張ることから初めて下さいね。」こうして役作りがスタートしました。

2014年02月22日 08:09

『思い出さがし』 113・表現会で学ぶもの②

日常保育で劇あそびをしていると、子ども達の興味や関心の様子がよくわかります。絵本を読んでもらった子ども達は、楽しかったり面白かったりした物語を再現しようと思うらしく「先生、くまさんごっこしよう。」とか「お姫様になりたい。」とか「王様になりたい。」という子がいます。もう何十年も前の事ですが、『シンデレラ』や『白雪姫』の絵本を読み聞かせしたところ、年長組が早速やりたいと言い出しました。女の子が多い学年だったのでしょうか。場面の変化も多くて、劇としては色々な形で脚色されたり音楽劇になったりして、題材を集めやすい作品ではありました。でも、先生達が困ったのは主人公のなり手は沢山いても、意地悪なママ母や魔女の役を希望する子がいるだろうかという不安でした。脚本や楽曲を取り寄せて、こんな役の人が必要なんだよと説明した時、一同に集まって学年主任の話を真剣に聞いていた子ども達がシーンとしてしまったそうです。男の子は関心が薄くて、ダンスはイヤやから別の劇にしようとひそひそ囁き始めたので「じゃ男の子はどっちがいい?」と聞くと、いつもいたずら好きな子が「7人の小人の出てくる方が面白い。」と答えたそうです。「そうや、7人の小人は男ばっかりでしたらいいと思う。」と言う子と「交ざっとる方がいいけど魔女は女の子やね。」という子がいて、白雪姫という物語へのイメージがどんどんふくらんでいった様です。(自分だったらどんな役をやりたいか)考えながらイメージをふくらませる子達は輝いています。

2014年02月14日 17:50

『思い出さがし』 112・表現会で学ぶもの①

表現会の練習がだんだん盛り上がって来ました。クライマックスを当日に持って行く前に、子ども達が楽しんで演じる子どもだけの表現会を企画して何年たったでしょうか。いきなり沢山のお母さんの前で舞台に立つのは、プレッシャーに弱い子にとっては辛い日になります。せっかく伸び伸びと演じていた子が沢山のお家の人を見てガタガタ震えたり、声が小さくなったり、トイレに何回も行ったり、セリフを忘れたりする子が多くなり、なんとか緊張を和らげたいと一週間前に子どもだけの表現会を実施することにしました。それには早くから準備が必要です。冬休みには出し物を決めて、学年でバランスを考えなくてはなりません。役決めも本人の希望を大切にしながら、去年はどんな役割をしたのだろうと考えたり、この子にはこんな力をつけさせてあげたいという教育的配慮も必要です。先生達は今の子ども達にどんなイメージや力を持たせたら良いかを話し合います。そのための題材さがしや曲選び、一人一人の伸びしろを考えながら、少しレベルを上げることができればと願いを込めて、一年の集大成である表現会を迎えるのです。毎日の積み上げが表現会になるので、日常保育の中に常にあるのは、この日の子ども達の晴れ姿です。クラスを越えて学年としてのまとまりを見せる子ども達。そのためにも楽しい練習が求められます。時には声を荒げる先生を許してくれ、どんどんまとまっていく子ども達を見ていると涙が出そうになります。子ども達はすばらしいです!

2014年02月07日 17:26

学校法人和田学園 認定こども園 青竜幼稚園


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