『思い出さがし』 121・子どもの居場所③
居場所を見つけられない子は遊びも転々として集中力がありません。どこへ行ってもゆったり遊びを楽しめないので、周りの子ども達から敬遠されてしまいます。それはその子のせいではありません。小学生でもしっかりスキンシップをとってあげると数ヶ月すると人が変わった様になります。M君が穏やかで安定感のある子に育ったのは家族の環境が素敵だったからです。両親や祖父母が口やかましかったり、指示命令をしすぎたり、怒ってばかりの中にいては子どもの心は安定しません。何でぼくだけを責めるのかと反抗心をむき出しにしてしまうか、逆に内にこもって自己表現をしなくなったり、いじけたり、妙に人の顔色を見てごきげんをとったりする子になります。大声のK君はそんな環境の中で育った子でした。余り笑顔のない父親と、すぐ大声で怒鳴る母親。そんな母親を自分の娘だからと遠慮なく罵倒する祖母のいる家庭で育ったのです。妹が産まれてから父親は娘にべったりになり、どこへでも連れ歩くようになり、祖母と父親の関係もぎくしゃくしています。K君は被害者だったのです。S子の優しさとM君の穏やかさに触れたK君は、担任にも甘えることのできる素直さを表現し始めました。私はできるだけK君に触れ抱っこして冬休みを迎えました。K君はM君の家でお泊まりすることになったのです。大おばあちゃんが嬉しそうにそのことを話し「いい子や。お手伝いもいっぱいしてくれた。ありがとうと伝えてください。」握りしめた大おばあちゃんの手は温かでした。