学校法人 和田学園  認定こども園 青竜幼稚園

感謝・感動・そして育ち合いを大切に…。人の温かさにほっとする幼稚園。

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前園長日記/和田節子ライブラリー

『思い出さがし』 ⑩ 女の子の言葉づかい①

「 教科書に『死ね 死ね きもい きもい』と書かれたのに気付いてやられず可哀想なことをしました。何とか事情を聞こうとするのですが、泣いたり怒ったりで話し合いになりません。何とか本当のことを聞き出したいのですが。」という電話が何本も入ったことがあります。書いているのは同一人物なのかどうか分かりません。そこで小学生の群れの中でそれとなく話を聞くことにしました。土日に園庭で遊ぶ子が多かったことも幸いしました。書くのは女の子で、クラスの大半がやられているらしいことが分かりました。その子には4年生の姉がいて、いつもイヤなことがあると「死ね」とか「きもい」といっているそうです。「それ口癖やと思うよ。だってその子のお母さんもよく言うもんね。」「うん、この間遊びに行った時も『はよせんかいね。きもい子やね』と何回も言っとったね。」「うん、それに反発したら、大声で『言うこと聞かん子やね、死ね』って言うとったよ、びっくりした。」「そやし気にせんとおけばいいがや。まねしてもいかんけど。」「『又、言うとる。ダメやよ』て言うてやる子おるし大丈夫や。」小学低学年の子にしては逞しい発言を聞きながら、色んな価値観の家庭から集まって来る子ども達が、その中で生きる術を磨きながら生活していることを知り、相談者に話し、ゆっくり話しましょうと約束しました。

2011年11月04日 14:18

『思い出さがし』 ⑨小さな喪主

幼稚園が創設されて45年もたつと6000人を超える子ども達との出会いがあります。
その中に数人ですが小さな喪主の姿との悲しい出会いがありました。わずか5才の男の子が白い喪服を着て、通夜と葬儀に集まって下さった方々に頭を下げているのを見るのは辛いものです。涙をおさえて5才の男の子の手を握りしめて言葉を失った私に対して「園長先生、ボクのお父さん死んだんやぞ。でも、もうボク泣かん。」と言って私の手を握り返した子のことを忘れません。悲しみに耐えているのが唇のふるえでわかりました。残された者へのとてつもない大きな悲しみを感じました。葬儀の日、その子の父の友人が涙と共に叫んだお別れの言葉を思い出します。
「君に言う!安らかに眠れとは言わない。愛する妻と小さな子どもを残した君は、力強い魂となってこれから毎日彼らを守れ!決して眠ってならない!おれ達も応援するが君の魂こそが必要なんだよ!待っている。」
式場からしのび泣く声があがり読経の声と共に亡き人の棺のまわりを包み込みました。凛とした小さな喪主は母の前を力強く歩き、父の遺影をしっかりかかえて丁寧に一礼し車に乗り込んで行きました。
人生での最大の悲しみを自分の成長の糧として生きた子は世界に羽ばたいていると風の便りで聞いています。

2011年10月28日 14:19

『思い出さがし』 ⑧再びおこづかいについて

1年生のおこづかいの様子は、他のクラスでもそんなに違いはありませんでした。お遣いに行った時のおつりをおこづかいにしている子もいましたが、万札を持ち出す子はいません。
「ぼくのお兄さんは学童野球に行っているので、毎日50円もらっているよ。帰りにアイス食べるんやて。」と言う子もいて、おこづかいについての関心は高く、
中学へ行ったら決まった金額をもらうのだと期待していました。参観日の懇談で、沢山の方からおこづかいについてご意見や感想が出ました。
上級生を持ったお母さん方からは、持たせていない子は持っている子のあとにくっついて食べ物をもらっていたり、拾った10円をだまって使ったりした話を聞き不安ですという声が多くありました。
上の子に高校生と中学生のいるあるお母さんは「親がしっかりしたお金の管理をしていて、持たせても持たせなくても、親の考えをしっかり伝えることが大切だと思います。
うちの子は高校生で自転車で通学しているので、必要なお金を必要なだけ持たせいますが、中学生は1ヵ月1000円ほしいといい、きちんとおこづかい帳を自分で作って見せてくれています。
学校へ出すお金は、お父さんに必ずお願いしますと言って納入袋を出し、ありがとうと言って学校へ持って行かせています。下の子はこの2人の兄を見て、自分で方法を選んでくれるのを待っている所です。」と静かにおっしゃったのが印象的でした。

2011年10月21日 14:20

『思い出さがし』 ⑦おこづかい

ずい分前の夏休みに、自転車屋さんが突然来園されて「この園に、山川一郎(仮名)君はいませんか?」とのことでした。
お話を伺うと、一郎君と名乗る6才の子が、3万円持って今自転車を買いに来たのだそうです。家は額新町だというので、
自転車を選んでもらっている間に、園にこんな子がいないか訪ねて来たと汗を拭いておられました。
「小学生ではないんですか?この園にはいません。」と言うと「その子は幼稚園だと名乗りました。」と困っておられます。
「小さな子の持つ金額ではないので警察へ行ってもいいのですが、子どものことを信じたいと思って来たのです。」
と途方にくれておられるのを見ていると、何とかしてあげたいと思い、隣の公園で遊んでいる小学生に聞いてみました。
すると「8月に1年生で引っ越しして来た子に、その名前らしい子がいるよ。」との答えでした。自転車屋さんはすぐに小学校へ出向くことになり、
何度もお礼を言って帰られました。あとで聞くと、引っ越しのドサクサにまぎれて、自分のお小遣いの中から3万円を持って出たとのことでした。
他校の1年生の担任だった私は、9月にお小遣い調査をしました。その結果38人中もらっていない31名、1日10円5名、1週間100円が1名、
1か月1000円が1名でした。何才からもらうようになったか聞くと、全員小学生になってからと答えています。
誕生日やお年玉にもらったものを貯めている子でも、3万円はいませんでした。お金の使い方は小さい時が大切です。

2011年10月14日 14:21

『思い出さがし』 ⑥お友だちがいない

集団の中でひとりぼっちでいるのではないか、さびしい思いで辛いのではないかと思う親がいるのは当たり前です。
友だちがいなくて淋しい思いをした親は、特に友だちのことに関心が強くなります。
「家へ帰って来ても友だちの名前が出て来ません。幼稚園ではちゃんと友だちと遊んでいますか?」と心配するお母さんの多い中でこんな方もおられました。
「こんな小さな時から、友だちを作りなさい。ひとりぼっちはかわいそう。と言うのは親のエゴです。子どもは小さい時に色んなことをじっくり見つめて、
自分の中にため込んでいく子になってほしい。その場しのぎの友だちでしかない子を、友だちだとして満足する親にはなりたくありません。」
控え目ですが、きっぱり言い切ったお母さんに対して、4人の子持ちのお母さんが穏やかに切り出しました。「うちの子たちは家に帰ると兄弟が多いので、
関わる力も自然に育っていると思いますが、1人や2人のお子さんを持った方はやはり心配だと思います。遊び友だちの中から親友は生まれるのでしょうし、
幼稚園で遊べているかどうかは親の大きな関心事ですね。でも、確かにお友だちのことでプレッシャーのかかる子には辛いと思います。」
この2人の話から、じっくり子どもの成長を見つめていこうというトーク会を懐かしく思い出します。

2011年10月07日 14:32

『思い出さがし』 ⑤まん中っ子はむずかしい

3人の子持ちのお母さんが集まると必ず「まん中の子は育てにくい」という話しになります。「同じことを言ってもまん中は素直じゃないのよ。」と顔をしかめます。
「そうなの。可愛くないのよね。」と困った声のお母さんが頷きます。私も少々同意しながらお母さんの輪の中にいます。「でもね。甘えん坊な面もない?」
と年の差が3才、6才、9才と均等にあるお母さんが言います。女ばかり3人のまん中っ子のC子ちゃんは、甘えん坊で独占力が強い子らしく、
上と下の子がいない時は、お母さんを独り占めです。「かわいいんだけど、まとわりつかれると上と下の子のあっさりしたのが嬉しいのよ。」
「いっしょよ。下の子は甘え上手でしつこくないのよ。上の子は何となく遠慮がちで愛しくなるでしょう。やっぱりまん中っ子がうっとうしいのよ。」
年令が近い程扱いにくい様で、離れているとそんなに困ってはいないことがわかりました。
「大きくなると、まん中っ子は役に立つ子が多いですよ。」と私が口を開くと、みなさんが「えっ。」と顔を合わせます。
「とても気づかい上手で、よく動くし、ほめられると喜びを全身で表現してくれる子が多いようです。企業の人事担当の方もそれを認めておられました。働く先生達にも同じ傾向があると思いますよ。」
「そうなんや。時々抱きしめてやらんといかんね。」と深く頷いていたのを思い出します。

2011年09月30日 14:33

『思い出さがし』 ④子どもの言葉づかい

あすなろ公園で遊ぶ子がめっきり減って、子どもの声を聞くことも少なくなったが、時々居間で静かに本を読んでいると話し声が聞こえて来ます。
公園の草むらでアリの行列を見つけた子が、母の呼ぶ声に答えずアリを見ているらしいのです。「早くおいで。」と立ち止まって呼んだが、返事のない女の子に
「何してんの。早く行くぞ。」と声を荒げています。それでも返答しない娘に背を向けて「もう知らん。おいて行くぞ。1人で歩いておいで。」と吐きすてるように叫ぶと、
女の子は「イヤー。」と泣きながら立ち上がったのですが「泣く子はいらん。言うこときかん子はもういらん。この公園でお泊りしまっし。
カラスいっぱいおるし、つつかれて死んでしまうよ。」と一気にまくし立てる母親の姿が見えて来ました。自販機で買ったビールやジュースの缶が数本見えました。
公園のフェンス横に止めてある車に急いで入ろうとして背を向け「カラスにつつかれて死ね!」ともう一度母が叫んだ時、女の子の口から信じられない言葉がとび出したのです。
「お前こそ死ね!」走りながら叫んで母に追いつき、その背を叩いていました。「お前こそ死ね!」という言葉は女の子のSOSの様に聞こえました。
「ごめんママ。でも死ねなんて言わないで!」と言うのが本心だと信じたいと思いました。

2011年09月23日 14:33

『思い出さがし』 ③パパはライバル

もう30年も前になるでしょうか。3才になったA子ちゃんは、色白でつぶらな瞳でクラスの人気者でした。ピョンピョンとび跳ねる仕草がかわいくて、男の子の憧れの的だった様です。
給食の時、隣に座りたい子も多かったのですが、中には、自分の思いと反対のことを言って困らす子も出て来たのです。運動会で楽しそうに踊るA子ちゃんに「変なおどり」とからかったりする位ですが、言われると余り良い気はしません。「そんなこと言わないで。」と言うと、「ヘンなおどり、ヘンなおどり」とはやしたてることも多くなり、先生も注意をします。そして「いっしょに踊ると楽しいよ。」と呼ぶとしぶしぶ入って来ます。でも嬉しそうです。
こんな事があってしばらくして、A子ちゃんのパパがお迎えにいらした時「B君ってどこにいるの」とクラスの子にたずねる姿がありました。その日は、偶然私もお会いすることができたので立ち話をしたのですが、パパは「いやー参りました。今までお風呂に入った時も、A子、パパのお嫁さんになる。と言っていたのに、昨日はB君のお嫁さんになる。と言い出しまして,私、昨晩は眠れませんでした。今日は、ひと目そのB君に会いたくて来てしまいました。ライバルですから。でも安心しました。とてもかっこいいすてきなお子さんですね。」
花嫁の父の思いが伝わって来ます。

2011年09月16日 14:34

『思い出さがし』 ②ある兄弟の苦悩と自立

父のラブレターを大切に持ち運んでいた母のことを思うと、子どもはどんなに厳しく叱られ、叩かれても
どこかで許してしまうことに気付き、みんなもそうなのかなと思いながら大きくなった様に思います。
何千人という人と出会って来て、自分と同じ思いをしている子がいるのでは、と想像してきました。
その根拠となったのは、両親がしっくりとバランスの良い仲良しだなと感じる方のお子さんは、
とてもお穏やかで優しく、バランスのとれた人間関係を築いていることがわかったからです。
かつて、小学1年で担任した男の子が、高校生になって私を訪ねて来ました。兄を連れて真剣な顔を見せました。
そしていきなり「ボク達は、愛し合った両親から生まれたかどうか確かめてくれませんか」
と言われたのです。私は心を込めて両親と話し、5人で会って話し合いました。長年、価値観の違いで悩んで来た両親は、
子どもに相談もなく離婚に踏み切ったことを知りました。子ども達は苦しんだのです。
「ボク達は愛の結晶ではなかったのか。何でボク達を生んだのだ!」怒りを直接ぶつけることが恐くてできなかったと言います。
両親がお互い1人息子1人娘だったばかりに巻き込まれた後継者問題が、両親の価値観の違いへと発展したのです。
「両親の愛を確認できたので、離婚は両親に任せます。」私は帰って行く2人の兄弟の自立を信じました。

2011年09月09日 14:35

『思い出さがし』 ①父のラブレター

今日から毎週金曜日に園長先生の『思い出さがし』を連載します。園長先生が今まで出会った方々との思い出が綴られます。
第1回目は「父のラブレター」です。

1936年(昭和11年)2・26事件のあった年に私は生まれました。東京も雪だったようですが、金沢も雪だったといいます。
激動の昭和時代のまん中で生を受けたことを実感したのは、5歳の冬、父の仕事で北朝鮮の鉄原という所に住居を移すことになった時です。保育園の年長組の時に仲良しの友達と別れることは辛いことでした。でも、子どもの力ではどうしようもないことでした。出発前の忙しい中で、私の心をホッとさせる時間がありました。荷造りを終えて、引っ越し荷物を積み込んだトラックが家の前に停車していました。私が玄関を見渡すと、柳行李(やなぎこうり)が1つ残されていました。角が破れて中が見えました。母が嫁入りの時、荷物を入れて運んで来た荷物入れだったのでしょう。破れた所から見えたのは、毛筆で書かれた封書の様でした。少し手を入れて中を動かすと「木村ことさま」と言う文字が見えました。もう少しかき回すと「田野芳老」と書かれた文字が何通もありました。父のフルネームです。でも木村こと、という名は知りませんでした。「だれだろう。」と思っている所へ母が来て「やっぱりこれ持って行くわ。」と独り言を言って柔らかい表情をしたのです。「あっそうや。母さんの名前は「こと」だった。---するとこの中はみんなお父さんからの手紙!」段ボール3個分の父から母へのラブレターです。何か暖かいものにくるまれた様な幸せ感がありました。厳しい母の意外は一面でした。

2011年09月02日 14:36

学校法人和田学園 認定こども園 青竜幼稚園


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