『思い出さがし』 ③パパはライバル
もう30年も前になるでしょうか。3才になったA子ちゃんは、色白でつぶらな瞳でクラスの人気者でした。ピョンピョンとび跳ねる仕草がかわいくて、男の子の憧れの的だった様です。
給食の時、隣に座りたい子も多かったのですが、中には、自分の思いと反対のことを言って困らす子も出て来たのです。運動会で楽しそうに踊るA子ちゃんに「変なおどり」とからかったりする位ですが、言われると余り良い気はしません。「そんなこと言わないで。」と言うと、「ヘンなおどり、ヘンなおどり」とはやしたてることも多くなり、先生も注意をします。そして「いっしょに踊ると楽しいよ。」と呼ぶとしぶしぶ入って来ます。でも嬉しそうです。
こんな事があってしばらくして、A子ちゃんのパパがお迎えにいらした時「B君ってどこにいるの」とクラスの子にたずねる姿がありました。その日は、偶然私もお会いすることができたので立ち話をしたのですが、パパは「いやー参りました。今までお風呂に入った時も、A子、パパのお嫁さんになる。と言っていたのに、昨日はB君のお嫁さんになる。と言い出しまして,私、昨晩は眠れませんでした。今日は、ひと目そのB君に会いたくて来てしまいました。ライバルですから。でも安心しました。とてもかっこいいすてきなお子さんですね。」
花嫁の父の思いが伝わって来ます。