『思い出さがし』 ⑦おこづかい
ずい分前の夏休みに、自転車屋さんが突然来園されて「この園に、山川一郎(仮名)君はいませんか?」とのことでした。
お話を伺うと、一郎君と名乗る6才の子が、3万円持って今自転車を買いに来たのだそうです。家は額新町だというので、
自転車を選んでもらっている間に、園にこんな子がいないか訪ねて来たと汗を拭いておられました。
「小学生ではないんですか?この園にはいません。」と言うと「その子は幼稚園だと名乗りました。」と困っておられます。
「小さな子の持つ金額ではないので警察へ行ってもいいのですが、子どものことを信じたいと思って来たのです。」
と途方にくれておられるのを見ていると、何とかしてあげたいと思い、隣の公園で遊んでいる小学生に聞いてみました。
すると「8月に1年生で引っ越しして来た子に、その名前らしい子がいるよ。」との答えでした。自転車屋さんはすぐに小学校へ出向くことになり、
何度もお礼を言って帰られました。あとで聞くと、引っ越しのドサクサにまぎれて、自分のお小遣いの中から3万円を持って出たとのことでした。
他校の1年生の担任だった私は、9月にお小遣い調査をしました。その結果38人中もらっていない31名、1日10円5名、1週間100円が1名、
1か月1000円が1名でした。何才からもらうようになったか聞くと、全員小学生になってからと答えています。
誕生日やお年玉にもらったものを貯めている子でも、3万円はいませんでした。お金の使い方は小さい時が大切です。