『思い出さがし』 ②ある兄弟の苦悩と自立
父のラブレターを大切に持ち運んでいた母のことを思うと、子どもはどんなに厳しく叱られ、叩かれても
どこかで許してしまうことに気付き、みんなもそうなのかなと思いながら大きくなった様に思います。
何千人という人と出会って来て、自分と同じ思いをしている子がいるのでは、と想像してきました。
その根拠となったのは、両親がしっくりとバランスの良い仲良しだなと感じる方のお子さんは、
とてもお穏やかで優しく、バランスのとれた人間関係を築いていることがわかったからです。
かつて、小学1年で担任した男の子が、高校生になって私を訪ねて来ました。兄を連れて真剣な顔を見せました。
そしていきなり「ボク達は、愛し合った両親から生まれたかどうか確かめてくれませんか」
と言われたのです。私は心を込めて両親と話し、5人で会って話し合いました。長年、価値観の違いで悩んで来た両親は、
子どもに相談もなく離婚に踏み切ったことを知りました。子ども達は苦しんだのです。
「ボク達は愛の結晶ではなかったのか。何でボク達を生んだのだ!」怒りを直接ぶつけることが恐くてできなかったと言います。
両親がお互い1人息子1人娘だったばかりに巻き込まれた後継者問題が、両親の価値観の違いへと発展したのです。
「両親の愛を確認できたので、離婚は両親に任せます。」私は帰って行く2人の兄弟の自立を信じました。