『思い出さがし』 ④子どもの言葉づかい
あすなろ公園で遊ぶ子がめっきり減って、子どもの声を聞くことも少なくなったが、時々居間で静かに本を読んでいると話し声が聞こえて来ます。
公園の草むらでアリの行列を見つけた子が、母の呼ぶ声に答えずアリを見ているらしいのです。「早くおいで。」と立ち止まって呼んだが、返事のない女の子に
「何してんの。早く行くぞ。」と声を荒げています。それでも返答しない娘に背を向けて「もう知らん。おいて行くぞ。1人で歩いておいで。」と吐きすてるように叫ぶと、
女の子は「イヤー。」と泣きながら立ち上がったのですが「泣く子はいらん。言うこときかん子はもういらん。この公園でお泊りしまっし。
カラスいっぱいおるし、つつかれて死んでしまうよ。」と一気にまくし立てる母親の姿が見えて来ました。自販機で買ったビールやジュースの缶が数本見えました。
公園のフェンス横に止めてある車に急いで入ろうとして背を向け「カラスにつつかれて死ね!」ともう一度母が叫んだ時、女の子の口から信じられない言葉がとび出したのです。
「お前こそ死ね!」走りながら叫んで母に追いつき、その背を叩いていました。「お前こそ死ね!」という言葉は女の子のSOSの様に聞こえました。
「ごめんママ。でも死ねなんて言わないで!」と言うのが本心だと信じたいと思いました。