『思い出さがし』 71・お正月のあそび
子どもの頃、畳を叩いて大掃除を済ませると何となくほっとしてお正月気分が盛り上がります。仕事人間の父親が家にいるのが何だか不思議で、チラチラと大掃除を手伝う父親を目で追いかけました。神棚や仏壇の掃除をマスクをかけて頑張っている姿を見て、今度はいつまで家にいてくれるのかなあと少し心細くなったりもしました。元旦は和服を着ておめでとうの挨拶を交わし、父からお年玉をもらい仏前に参るといった一連の流れが終わると、お雑煮を食べてくつろいだ後、お正月の遊びが始まりました。カルタ取りは犬棒カルタに決まっており、父の読み札を読み上げる力強い声で一年が始まるのでした。「2階から目薬」「ろんよりしょうこ」など意味のわからない言葉を覚えて手に入れたカルタの札を数える時のわくわく感を忘れません。新しいカルタをおばさんにプレゼントされた時のわかりやすい文章がとても新鮮で「あひるのかあさんがあがあがあ」「かえるぴょんぴょんやなぎのき」「さくらふぶきのすみだがわ」などかすかに覚えていますが、次々に出て来る新カルタと混同してはっきり記憶に残っていません。一番楽しかったのは福笑いで、とんでもない顔の福の神に大笑いをしたものです。その時の父親の笑顔は私の大きな財産になりました。忙しい父のめったに見ることのできない笑顔は、今も心の中で生きています。