『思い出さがし』 62・いもほり②
おいもの周りをぐるっと掘ると、3つつながったいものかたまりが出てきました。「先生といっしょによいしょってひっぱって見ようか。」と言うと大きく頷いて立ち上がりました。2人でつるのついている所を持って「ヨイショ!」と引っぱりましたが砂がくずれただけで抜けません。すると「まだまだ抜けません。」と彼女ははっきりした声で言ったのです。きっと何かイメージが浮かんだのでしょう。「先生と一緒に、よいしょ、うんとこしょ。」と目を輝かせて言うので一緒に引っぱりました。3つの大小連なったおいもが抜けました。「ヤッター!まごを呼ばなくても抜けたね。」と嬉しそうに話す女の子の笑顔は忘れることができません。きっと彼女は本好きなママのもとで毎日絵本を読んでもらって大きくなったのでしょう。そして、大きなかぶの絵本を思い出して、おいもを引っぱったのでしょう。その日の体験はその子の心に長く残ったらしく、それから園内で顔を合わせるたびに「先生、大きい重いおいも、よいしょって引っぱったね。」とか「2人で抜けたね。ねずみさんに助けてもらわんかったね。」とか「大きいおいもやったね。」と話しかけてくれました。「出ておいで。」となでなでしたおいもの表面は皮がむけて美しい紫色ではありませんでしたが、共に絵本のイメージを楽しみながら掘ったいも掘りの思い出は美しいものになりました。日々の行動を絵本のイメージとつなげて楽しむことのできる子は、幸せな時間を積み上げて行く子に育つのだと思っています。 2012年11月02日 10:33