『思い出さがし』 69・もういくつねると①
ジングルベルの歌が聞こえて来ると、後を追っかける様に「もういくつねるとお正月」という歌が聞こえて来ます。ジングルベルが聞こえるのはそんなに昔からではありませんでしたが、時代の流れはどんどんクリスマスの行事に力を入れる様になりました。我が家では、ジングルベルや聖夜を歌うことはなかったので、いつも「もういくつねるとお正月」をよく歌いました。そしてお正月はどんな遊びをするか子ども達が話し合っているのを聞いていたような気がします。そんな時、まわりの友人の中にお父さんが入院され、淋しい思いをしている子がいました。「ぼくのパパ、お正月にお家帰れんかな。一緒にカルタしたいんだけど。」と言っているのを聞いて「お母さん、あの子、ぼくんちへ呼んでもいい?」と三男に言われて「一年生になると他人の気持ちがわかるんだ。」と感心しました。そして冬休みが始まると早速家へ連れて来たのです。三食をきちんと食べて、お風呂に入って8時頃帰って行きました。母親が父親の分も働くことになり帰る時刻が遅くなったのです。毎日息子と遊んで三食食べて、お風呂に入る日がお正月過ぎまで続きました。土日は泊ってもいいよと言うと、遠慮なく泊ることも出来るようになりました。私も遠慮なく用事を言いつけたり、仕事を頼んだりしました。「もういくつねるとお正月」と歌いながら、カルタやゲームを楽しむようになりました。しかし、父親は退院後も働くことができず、母親の苦労は増えるばかりだったのです。