学校法人 和田学園  認定こども園 青竜幼稚園

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前園長日記/和田節子ライブラリー

『思い出さがし』 211・小さな親切①

昔の話になりますが、一時、小学校で流行したのが『小さな親切運動』でした。職員会議で決まったことだったのですが、少数派である反対の意見は聞いてもらえませんでした。「小さな親切」を教える時、当時3年生担任だった私は、親切ってどう思っているのか聞くことにしました。「ねえ、みんな親切って言葉知っている?」「はい」と大部分の子が手をあげました。「えっ、すごいな。先生は皆さんと同じ年令の時は、新しい雪だと思ったんだけど同じことを思った人いる?」「え~、言い方が違うし、間違えなんてしないよ。」「だってシンという所が強く言っているのが親切や。」「そうや、だって雪の方はシンセツって、まっすぐ言うやろ。」「う~ん、そうか。じゃ先生、漢字で書いて見るよ。みんな読んでみて。」私は親切と書きました。みんなは「シンセツ」強弱をつけて読み、得意そうです。次に、新雪と書きました。「シンセツ」「ほら、一本調子やろう。」と子ども達。「参った、参りました。」私は笑って頭を下げ、「ところで、親切ってどんなことでしょう?」と質問しました。「誰かが困った時、助けること。」「重い荷物を持ってあげること。」「忘れ物をした子に貸してあげること。」「親という字があるから親みたいに優しくしてあげること。」「親でも怒ったり怒鳴ったりする親いるよ。」「でも優しい時もあるよ。」「病気になったら、す~ごい心配してくれるよ。」「そうや、心配してやることも親切やな。」と朝の会がなくなってしまいました。
2016年03月20日 23:57

『思い出さがし』 210・子どもの思い②

少しバツの悪い顔をした大きいお兄ちゃんの手をとってH君は嬉しそうに「ありがとう。」と言っていました。涙のあとはありましたが、とても嬉しそうでした。入場までの廊下での5分後の出来事でしたが、まわりの子ども達はどう思ったのか知りたかったのですが、大きいお兄ちゃんのS君は私のクラスの子だったので、後で「ごめんね、無理言って、ありがとう。」と伝えると「オレで良かったのかな。ちょっと恥ずかしかった。」と話してくれました。そして、「まわりの子はどう思ったかな。それが気になった。」とのこと。6年生の中でも大きくて目立つ少年だったS君は160cmを超える長身で目のきれいな子でした。控え目でバスケットのシュートが得意なスポーツマンでした。1年生のH君とどんな関係があったのか知りたくてS君に聞きましたが、入学式で初めて会ったとのこと。H君にとってもお兄ちゃんなら誰でも良かったのでしょうか。入学して1年生も給食が始まる頃、4階の6年生の教室の廊下に小さなお客様(?)が来ました。H君でした。息を切らしています。「おや、H君、どうしたの?お兄ちゃんに会いに来たの?」と私が尋ねると「うん、お兄ちゃん、どこ行ったん?」「給食当番で2年生の世話に行ったよ。」「そうか、じゃ、お兄ちゃんに言って『ありがとう、大好きだよ』ってね。」「分かった、必ず伝えるね。ありがとうH君。」「エヘヘ・・・・。」照れ笑いをするH君が大きく見えました。こんなエピソード溢れているのが学校です。
2016年03月11日 23:58

『思い出さがし』 209・子どもの思い①

1年生が入学式に記念写真を撮る学校が多い時代に入った時、私は1年生の補助をした日を思い出します。1年の1組で男の子が多いクラスでした。6年生の子がひとりひとりについて会場へ案内するのですが、ある男の子H君はお世話をしてくれる6年生の女の子を拒否し、男の子と交代を要求したのです。困っている6年生を見て担任の先生が「他の子を見てごらん。みんなちゃんと決まった人と手をつないでいるでしょう。お約束だから守りましょう。それにイヤと言われたら悲しいでしょう。お姉さんの気持ちも考えるのが1年生ですよ。」とハッキリしっかり話しかけました。さすがベテランの先生と思っているとH君は「お姉ちゃんのことは嫌いじゃない。男は男、女は女で入場したいだけや!」と少し強い声で言います。「1組だけ勝手なことはできません。それはわがままというものです。」厳しい声でした。「じゃ、ボク入学式出ない!」「じゃ、先生と一緒に入場しましょう。」「ヤダ、先生も女だから!」H君の叫ぶ様な声で辺りはシーンとなりました。私は、とっさにH君を抱きしめて「H君、どうして男の子がいいの?」と聞いてしまいました。H君は泣きながら「ボク、一番に入るから大きいお兄ちゃんとかっこ良く入場したかったんや。」と私のスーツで涙を拭いていました。ベテランの担任は「じゃ、後ろの大きい男の子お願い!かっこ良く連れていってね。」と少しあきらめた笑顔で送り出しました。
2016年03月06日 23:57

『思い出さがし』 208・成長する子ども③

「先生、参観日の日のお母さんは、いつもニコニコしていて嬉しいけどコワイ日もある。」と言った2年生がいました。足の遅いB君は、それがコンプレックスになっていたのでしょう。体育の参観は苦手でした。運動会も好きではないので雨が続くのを願っている様でした。でも足の速い子には憧れもあって、その子の走りをじっと見つめて手の振り方を真似する時もありました。その真剣な眼差しをはっきり覚えています。美しい表情でした。速く走ってテープを切りたいと思っていたのでしょう。体育の時間をとても大切にしていることが分かりました。「ね、B君コワイ日ってどんな日?」と聞くと、「お友だちの話をしっかり聞いていない日。」とのこと。「へぇー、お母さんそれがすぐ分かるんだね。」と感心していると「(だってあなたはお話をする子の方を見ていなかったでしょう。鉛筆をクルクル回していたでしょう)って厳しいんだ。」うつむいて不満そうです。「鉛筆を回していたのは遊んでいたわけではなかったの?」と聞くと「うん!あの時のお友達の言うことが違うなあと思って、自分の考えていることをまとめようとして鉛筆を回していたんだ。」といつもの綺麗な瞳で訴えて来ました。子どもって、その行動のひとつひとつにちゃんと理由があるのです。それを受け止める大人が必要なのでしょうね。
2016年02月28日 23:58

『思い出さがし』 207・成長する子ども②

自分の担任した少年少女達が、青年になる過程で悩んだり苦しんだりする姿を見るのは辛いものです。父親が単身赴任となり、家の中の雰囲気がガラリと変わったT君。T君にとっては家族とは何だろうと考えるチャンスではありました。毎日、給食の後、さり気なく近づいて来て、ポツリと話す言葉が心に残りました。台風が通り過ぎた翌日は、「先生、夕べ、ガラス窓がブルブル震えて今にも破れそうだったよ。」ささやく様に言って来ました。「先生も怖くて眠れなかった。屋根が飛んで行くかと思ったわ。」と答えると、そっと私のヒザの上に優しく腰掛けて「お父さんがいる時はボク何も心配せんと眠れとったのにボクも眠れんかったんや。お父さんがいるというだけで家族が安心しておれるんやなぁと思って、お父さんて大切な人なんやって思った。」「お母さんにあなたの思ったことを伝えてみたら良いと思うよ。そして家族って何だろうと考えてみてほしいな。」私の答えを聞くと深く頷いて友達の群れの中に入って行きました。それから1週間程して給食後、私のすぐ隣りに身を寄せて「先生、お母さんと話して10時頃まで沢山お喋りしたよ。」「そう、よかったね。どんな話をしたの?」「あのね、お母さんがね、お父さんがいなくても、あなたが台風の心配をしてくれたことが嬉しくて電話をしたんだって。そしたら、お父さんが『成長したな。今度帰ったら抱きしめてやりたい』と言ってたよって話してくれた。」胸がキューンとなり肩を抱きしめました。
2016年02月19日 23:58

『思い出さがし』 206・成長する子ども①

卒園児達が高校生になると、みんな成長して骨格まで違うと、出会っても全く分かりません。もっとも少し話すとその話しぶりや表情が幼い日を思い出させてくれることがあります。男の子は背が高く、シャイになり礼儀正しく無口になっていますが、女の子は人懐こくてお喋りになり、とても身綺麗になっていて、お母さんと一緒の時は分かりますが、男の子と同じく少し話してみないと思い出せません。そんな子の中に幼い頃、父親を亡くした子の成長した姿に会いました。2年後には留学を考えていると語り、イギリスを希望しているとのことでした。「確か、お姉さんがいらしたよね。」と言うと、ビックリした表情で、「よく覚えてくれていましたね。今、姉は京都の大学で先生になるための勉強をしています。覚えて頂いてきっと姉も大喜びだと思います。」と嬉しそうに近づいて来て「お母さん」と買い物をしている母親に声をかけて私の肩を押して、お母さんに近づけてくれました。「あっ、先生!何年ぶりでしょうか、懐かしいです。」両手を握りしめて下さいました。10年以上も前になるのでしょうが、父親の遺影をしっかり胸に抱いて、可愛い声を少しふるわせて、「ありがとうございます。」と頭を下げた男の子の姿がよみがえり思わず涙ぐんでしまいました。残された母と子が良い時間を過ごしたことがすぐ分かり、お互い手を握り合い、これからのことを祈りました。
2016年02月12日 23:57

『思い出さがし』 205・うさぎのランちゃん⑥

ランちゃんが静かになったので、温かくなって眠ったと思ったSちゃんは、ピンクのバスタオルの上に小さな毛布をかけて自分の部屋の勉強机の足元にそっと置いて宿題を始めました。大好きな計算ドリルだったので鼻歌まじりで書き始めました。2ページ目をめくって、ふと甘い物が欲しいと思ったSちゃんは鉛筆を置いて茶の間のおやつのある所へ行きました。大好きな動物ビスケットがいつものおやつ箱にありました。犬やパンダや猫やウサギの形をしたビスケットの絵が並んで描かれたページを思い出します。おやつ箱を抱えて自分の部屋に戻ったSちゃんは「ランちゃん、一緒にビスケット食べよう。1枚だけだよ。」と声をかけて小さな毛布をめくりました。そこにいたのは、言葉をかけてもビクとも動かない耳のタランとしたランちゃんだったのです。「ランちゃん、どうしたの?起きて!ねえ!」Sちゃんは叫び続けましたが、いつものフカフカした毛は濡れたままで、抱き上げると耳も足もダランとして力がありません。「お母さん!助けて!ランちゃんを助けて!」泣き叫ぶSちゃんのもとへお母さんがかけつけ、近くの動物病院へ運びましたが2度と立ち上がってSちゃんのヒザの上に乗ることは出来ませんでした。この悲しい話を8ページの絵本にした後、1枚の写真を私にくれました。それはランちゃんを教頭先生から頂いた時の写真でした。
2016年02月05日 23:58

『思い出さがし』 204・うさぎのランちゃん⑤

朝、気温もそんなに低くなく小春日和の様な日だったので、Sちゃんはランちゃんをお庭の柔らかい日光のある場所において、元気よく家を出たのです。3年生のSちゃんは火曜日は大好きな図工の時間が5、6限にある日だったのですが、終わりの会の頃、真っ黒な雲の間から稲光と共に白い粉状のものが落ちて来るのを見て、ハッと思い出しました。「あ、ランちゃん、お庭に置いてきた」さようならの挨拶もそこそこに仲良しのお友達の呼ぶ声も耳に入らず、家まで超特急で走りました。「ランちゃん、ランちゃん」と泣きそうに走って鍵を開けてお庭へ直行するSちゃん。ランドセルを縁側に放り投げてランちゃんのカゴへ。朝に出かける時、一枚のタオルをカゴの上に置いて来たのですが、吹き荒れたみぞれまじりのあられの中で、ランちゃんはカゴの片隅で震えていたそうです。濡れて柔らかな毛がベッタリ体に張り付いていたのです。「ごめんランちゃん、ごめんね。すぐ温かくしてあげる!」ランちゃんを抱き上げたSちゃんは、すぐお風呂場へ行って温かいシャワーを全体にかけて、震えが止まるまでシャワーをかけたのでしょう、初めは元気にあばれていたランちゃんが静かになったので、バスタオルで包んで体を拭き「ごめんね」を繰り返したと目をつむったランちゃんのピンク色のバスタオルにくるんだ絵が描いてありました。
2016年01月29日 23:57

『思い出さがし』 203・うさぎのランちゃん④

新しい子ウサギがランちゃんの小屋に入ってランちゃんは、Sちゃんの子ども部屋の隅っこに可愛いお家の飾りつけを付けてもらってSちゃんの家族になりました。ピンクの好きなSちゃんは、ピンクでカゴを可愛く飾り、一緒に撮った写真が絵本の一ページに貼ってあり、横にパパに買ってもらったエサの入った袋にも『ランちゃんのエサ』と書いたピンクの縁取りある可愛いラベルのようなものが貼ってありました。家族みんなで可愛がっている様子が良く分かりました。親類のお店屋さんのお手伝いに行っているママは、ランちゃんが来てからはSちゃんが学校から帰って来たのを確かめてお店を手伝う時間を少し長くしました。Sちゃんが「ママ、淋しくないからランちゃんとお留守番できるし。」と言ったからです。ランちゃんを抱っこしてママに「バイバイ」している絵の中のSちゃんの手が大きく描かれていて印象的でした。小さなお庭で自由にしてやると草を少し食べて飛び跳ねて地面を掘り出すらしく、お庭が穴ぼこだらけになったと書いて、穴の中に体を入れて丸くなっているランちゃんの姿がとても幸せそうに見えました。教頭先生からランちゃんをもらって一年が過ぎました。誕生会もしたらしく、ローソクが2本立ったケーキが描かれていました。ランちゃんは人参で作ったケーキを食べたそうです。11月の終わり頃、朝は、とってもいい天気だったのに3時頃には「みぞれ」が「あられ」と共に降って来ました。
2016年01月22日 23:57

『思い出さがし』 202・うさぎのランちゃん③

その頃からランちゃんはサクの近くでSちゃんを待つ様になったといいます。「私のことを待っているランのことを思うと、いつも胸がドキドキして嬉しかった。」とランを小屋の端っこでジッと待っている姿が絵本の頁をうめていました。自分を頼りにしてくれる人がいることは、大きな喜びだったのでしょうね。やがてランちゃんはSちゃんの呼びかけに反応し、声を聞くとピンと耳を伸ばして声のする方を見る様になり、近くまで走って来る様になったのです。右耳の先が5cmほど折れ曲がっているランちゃんを見て、「変な耳、ちゃんと伸ばせ!」と大声で、はやしたてる男の子達を見てSちゃんは何も言えず「ごめんね」と心の中で呟くだけだったのです。でも、優しい子も沢山いて「かわいそうや、一番かわいいのに耳にケガしとるね。誰かにやられたんかね。動物病院で治してあげるといいのに・・・。」と言う子もいてSちゃんもランちゃんのエサやりを楽しんでいたのです。絵本の中のランちゃんはいつも丸い赤い目をパチクリさせて前足をあげている姿が印象的でした。ある日、学年だよりでウサギの新しい赤ちゃんが生まれたので大きくなったウサギを飼いたい人は、両親のお許しを待って申し込んでほしいというニュースが飛び込んで来ました。Sちゃんは毎日の様に報告していたランちゃんのことを飼いたいと両親に頼みました。次の子に恵まれなかった両親は、すぐに賛成してくれたそうです。ランちゃんは入れるゲージを買い、教頭先生からエサも頂いてランちゃんとの生活が始まりました。
2016年01月15日 23:58

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