『思い出さがし』 205・うさぎのランちゃん⑥
ランちゃんが静かになったので、温かくなって眠ったと思ったSちゃんは、ピンクのバスタオルの上に小さな毛布をかけて自分の部屋の勉強机の足元にそっと置いて宿題を始めました。大好きな計算ドリルだったので鼻歌まじりで書き始めました。2ページ目をめくって、ふと甘い物が欲しいと思ったSちゃんは鉛筆を置いて茶の間のおやつのある所へ行きました。大好きな動物ビスケットがいつものおやつ箱にありました。犬やパンダや猫やウサギの形をしたビスケットの絵が並んで描かれたページを思い出します。おやつ箱を抱えて自分の部屋に戻ったSちゃんは「ランちゃん、一緒にビスケット食べよう。1枚だけだよ。」と声をかけて小さな毛布をめくりました。そこにいたのは、言葉をかけてもビクとも動かない耳のタランとしたランちゃんだったのです。「ランちゃん、どうしたの?起きて!ねえ!」Sちゃんは叫び続けましたが、いつものフカフカした毛は濡れたままで、抱き上げると耳も足もダランとして力がありません。「お母さん!助けて!ランちゃんを助けて!」泣き叫ぶSちゃんのもとへお母さんがかけつけ、近くの動物病院へ運びましたが2度と立ち上がってSちゃんのヒザの上に乗ることは出来ませんでした。この悲しい話を8ページの絵本にした後、1枚の写真を私にくれました。それはランちゃんを教頭先生から頂いた時の写真でした。
2016年02月05日 23:58