『思い出さがし』 204・うさぎのランちゃん⑤
朝、気温もそんなに低くなく小春日和の様な日だったので、Sちゃんはランちゃんをお庭の柔らかい日光のある場所において、元気よく家を出たのです。3年生のSちゃんは火曜日は大好きな図工の時間が5、6限にある日だったのですが、終わりの会の頃、真っ黒な雲の間から稲光と共に白い粉状のものが落ちて来るのを見て、ハッと思い出しました。「あ、ランちゃん、お庭に置いてきた」さようならの挨拶もそこそこに仲良しのお友達の呼ぶ声も耳に入らず、家まで超特急で走りました。「ランちゃん、ランちゃん」と泣きそうに走って鍵を開けてお庭へ直行するSちゃん。ランドセルを縁側に放り投げてランちゃんのカゴへ。朝に出かける時、一枚のタオルをカゴの上に置いて来たのですが、吹き荒れたみぞれまじりのあられの中で、ランちゃんはカゴの片隅で震えていたそうです。濡れて柔らかな毛がベッタリ体に張り付いていたのです。「ごめんランちゃん、ごめんね。すぐ温かくしてあげる!」ランちゃんを抱き上げたSちゃんは、すぐお風呂場へ行って温かいシャワーを全体にかけて、震えが止まるまでシャワーをかけたのでしょう、初めは元気にあばれていたランちゃんが静かになったので、バスタオルで包んで体を拭き「ごめんね」を繰り返したと目をつむったランちゃんのピンク色のバスタオルにくるんだ絵が描いてありました。
2016年01月29日 23:57