『思い出さがし』 230・夏の海②
町内会の青年達は沖の方まで泳いで行って貝を持って来てくれました。それをアカシアや松林の中で手作りのコンロを作って焼いて食べさせてくれました。網の上に乗せられた貝が「アツイアツイ」と悲鳴を上げて殻を開いていくのを見るのが辛くて、私はいつも輪の外で砂の中に足を突っ込みながら眺めていました。みんなが「うまいうまい」というのを聞いて食べ終わった貝殻を集めていました。とても熱い殻を持つと胸が痛みました。「熱かっただろうな。でもみんなを幸せな思いにさせてくれてありがとう。ごめんね。」と心で言いながら1つ1つ海水で洗って持ち帰りました。美しい貝ばかりではありません。ゴツゴツした壺の様なものやはまぐりの中に黒いカラスの貝もありました。砂浜を歩くと他に美しいさくら貝や名も知らない美しい貝殻もありました。身はどうなったのでしょう。鳥に食べられたのかも知れません。色んな事を思いながら拾ってきました。2階の勉強机の隅っこにカゴの中に入れハンカチをかけておいたのですが、2学期が終わった冬休みに大掃除をした時、弟の拾って来た金属類(クギ、ネジ等)と一緒に全部捨てられてしまいました。弟は「お金になると思ってためとったのに。」と大荒れ。私は思い出が消え去ったと肩を落としていた時でもありました。弟は母に「おこづかいに不自由させたことなんかない!!」と叩かれ、私は「思い出なんてこれからいくらでも作れる!」と怒鳴られました。母の言う通りになりましたが、プロセスはやはり大切です。
2016年08月21日 23:58