『思い出さがし』 225・子どもの夢①
2年生を担任した時のことです。みんなからメルちゃんと呼ばれていた子がいました。瞳の美しいかわいい子でした。どうしてメルちゃんと呼ぶのか不思議な気持ちを子ども達に投げかけたいと思ったのですが、(待て待て、少し様子を見てみよう)と思って、ある日の朝の会も注意深くメルちゃんを見つめていました。朝のニュースを聞いたり、話したりする時間がきました。当番の男の子はとてもいたずらの好きな明るい子だったので、楽しく朝の会は進んでいきました。「ニュースを話したい人は時間がないので30秒で話して下さい。」と言う当番に対して「1分だけお願いします。」と手を挙げたのはメルちゃんでした。司会の男の子は少し困った顔をしましたが「認めます。1秒過ぎてもアウトです。」と言い切り、みんなも「そうやそうや。」と拍手です。「じゃ、用意始め!」と男の子の手拍手でメルちゃんの発言が始まりました。「みなさんありがとう。聞いてください。家から出て木の影のところを歩いていたら、白い花びらがヒラヒラ落ちて来たのよ。ヒラヒラと落ちてくるのは美しいんだけど、上を見たら桜の花みたいにきれいじゃないの。みどりの葉つばの陰で静かに咲いていたのよ。よく見たら私の好きな梨の木だったの。」「それがどうしたんだよ。」「聞いてよ。みんな。神さまってちゃんと考えておられるのね。母さんの言う通りだと思ったわ。」「チーン。時間です。」「おねがい!もう少しでクライマックスだから。」
2016年07月06日 23:57