『思い出さがし』 229・子どもの夢⑤
『ごんぎつね』を読んでもらった5年生の男の子は次週の月曜日の朝、2年生の私のクラスの横を何度も通りながらメルちゃんを待っている様でした。メルちゃんはいつもぎりぎりに教室へ入って来るので、心配しながらメルちゃんの来校を待ちました。長い廊下を蛇行しながらやって来たメルちゃんを見つけた男の子は「おはよう!メルちゃん。」と大騒ぎ。まわりのみんなはただただびっくり。「どうしたん?」「メルちゃん、なんかしたん?」とメルちゃんに近づきます。「夕べね、お父さんにごんぎつねを読んでもらったよ。」と興奮ぎみの男の子。そして叫んだのです。「お父さんが泣いてしまったんや!」「えっ怖い話だった?」「違う!感動したんだって。」「感動ってびっくりすること?」「ちょっと違う。すてきだなって心がドキドキすることだよ。」「えー!?きつねの冒険?」「違う!」分からん奴だなあといった顔をした時、始業のベルが鳴りました。「じゃ、また掃除の時にね。」と男の子は教室へ走りました。その頃、掃除の時間は5年生と2年生が一緒に行動することになっていたのです。掃除時間、男の子は一番にやって来てメルちゃんの何やら説明していました。班長さんに「しゃべってばかりはダメです。」と叱られていたようです。掃除点検後さようならとした後、仲良く話す2人は和んで見えました。こうしてごんぎつねの物語を知った2人は、きっとそっと食べ物を運んだごんぎつねが鉄砲で打たれた後の煙のことで涙したのでしょう。次の日、ごんぎつねの夢を見たと言って感動していました。
2016年08月07日 23:21