『思い出さがし』 196・読書①
生まれて2週間目から絵本を見せたり、昔話を素話で話したお母さんに会いました。すっかり絵本や昔話に出会うこともなく、30才でお母さんになったMさんは産院から退院して来た時、看護師さんが自分の体験として話されたことが、きっかけだったと言います。2週間目から、おっぱいを飲み終わった昼ごろ、自分の気持ちがホッとした時に「むかしむかし、あるところに・・・」と自分の祖母の話してくれた『ももたろう』の話をし始めたと言います。おなかがいっぱいになって、自分の唇をちゅっちゅうと動かして眠る乳児の小さな体に、そっと手を置きながら話してみたそうです。時々、もぞもぞして、あくびをしたりしていた赤ちゃんが、お母さんの方に顔を向けて聞いている様に見えました。小さくて、真っ赤な唇が少しゆるんで来て、母の話をしっかり聞いている様に思い、小声で静かに「ももが川上から『ドンブラコッコ スッコッコ』と流れて来ました。」と語り続けました。「ドンブラコッコ スッコッコ ドンブラコッコ ドンブラコ。」と繰り返している内にいつか自分も聞いたことのあるリズムになって懐かしい日々が思い出されたと言います。わが子を育てるのは自分の育ちを掘り起こすことにつながるんだなぁと思い出していると心安らかになり乳児に寄り添って眠っている自分に気付いたのは体中をもぞもぞさせている赤ちゃんの動きが伝わって来た時だったと言います。子育ては、自分の育ちを掘り起こすことだとの考えは良く分かります。
2015年12月04日 23:56