『思い出さがし』 195・変わった子⑦
幼児から少年そして青年へと成長していく子ども達の心の動きは、とてもデリケートで、その時代に読んだ物語に触発され変化していきます。いつまでも子どもだと思っていた子が自己主張を始めると母親は悲しくなることが多い様です。子が大声をあげる理由を理解する前に感情的になるのでしょうか、反対に怒鳴り返す母親もいます。怒鳴り返すエネルギーに自分の思いをぶつけることのできる子は、日常の生活の中で修復するチャンスがあるようです。でも、最愛の母が悲しい顔をして泣いているのを見ると、とにかく母を悲しませたくないと思い、『ごめんなさい』と言って自分の思いを胸の奥にしまい込んでしまうのです。家では、できる限り自己主張を抑え明るく良い子でいるのが良く分かります。O兄ちゃんのそんな思いを知っているS子の存在はとても大切だと思いました。家で良い子である分だけ、学校では自分をより出すことになり、バランスを取っていたのでしょうね。S子が「先生、O兄ちゃんのこと分かったら、いつも味方になってあげてね。私は黙って見とることしかできんもん。」何と可愛いことを言う子でしょう。私はS子の両手をしっかり握って「2人で応援しようね。」と手の温もりを感じ合いました。4年生の先生にO君のことを聞くことも大切だと思いましたが、S子との約束を守り、2人の秘密としてO君の様子を見守り続けました。心の強い主人公のいる物語を読むO君は次第にセルフコントロールできる子になりました。本を読むことの大切さを知った出会いでした。
2015年11月28日 15:42