『思い出さがし』 188・いろいろな子と出会う④
クレヨンは緑と紫しか使わず、人や動物は必ずシルエットで描く子で文章を見たのは初めてでした。「土肥君、クレヨンを貸してあげたことないの?」といろいろ考えた後に聞くと足の動きを止めて、「そうや!みどりのクレヨンあげたことある。短くなって使えんくなって、指でコネコネしとったし、『ボクの使って』とあげたの忘れとった!」と表情が柔らかくなります。「でも先生、ボクがとってもイヤなこと言ったがに(ありがとう)って言うかな。ボクやったら、いらんものにやらんわいと思って、次の子の分を描くけどなあ。先生、不思議な子やね。先生もそう思わんけ?」静かだけど早口に話しかける土肥君が、いつもクールで何を考えているのか分からない子だと思っていたのに、とても身近に感じました。「不思議な子だと思うよ。でも、君もフシギちゃんだよ。」「どうして?!フツウだよ。」「あなたは、みんなの中にいてもみんなと違うことを考えている子だなあといつも思っていたよ。」「どうして?」「音楽室でカエルの歌を歌っている時、真面目な顔をして『グワーグワーグワグワ・・・ガガ』とわざと汚い声で歌っていたでしょう。全くふざけていないのに女の子達がイヤな顔してたもん。」「ボク真剣に、おじいちゃん蛙になって歌ったんやぞ。分かっとらんなあ。」「ごめん、ごめん、先生から女の子達に話すからね。A君があなたに『ありがとう』と言ったのは、きっと、みどりのクレヨンのお礼だと思うよ。『そんな絵いらん』というあなたの声を聞いて、ふっと、そのこと(みどりのクレヨン)のことを思い出したんだと思うな。でも、『ありがとう』って言葉って素敵だと思わない。」「うん、ボクA君に言われた時、あっ、オレってイヤな奴やって思ったもん。いい言葉や。でもあんまり言われると気持ち悪いかも。」やっぱりA君と同じ変わった子でした。
2015年10月09日 23:58