『思い出さがし』 185・いろいろな子と出会う①
自閉症という言葉が、まだ理解されていない時代に小学2年生で初めてそんな傾向の男の子A君を担任したことがあります。音楽室を使用できる日があり、音楽室の前まで手をつないで行ったのですが、ドアの前でピタリと動かなくなり私の手を痛い程握りしめて震えていました。他のクラスメートが全員もの珍しいのでしょう、バッハやモーツアルトやベートーベンの肖像画の前に群がって「こわい目つきや。」「女の人みたい髪型や。」「なんか王子様みたい。」等と口々に言い合って、笑い合っていました。「A君も写真みてみよう。」と誘ったのですが、階段の方を指さして「かえる、かえる。」と言って私の手を引っ張ります。みんなのワイワイ言う声を聞きながら「ちょっと待ってね。他のお友達に座ってもらうまで待ってね。」と言うと、少し力を抜いてくれたので、抱きしめて「ごめんね。」と言い、部屋に入ってみんなに席の指示をし、ピアノの上手なKさんにピアノを頼んで(かえるのうた)の練習を頼んでA君のもとへ急いだのですが、彼はもうクラスへ戻ってリラックスして、サザエさんの絵を描いていました。2枚の絵は全く同じで、印刷したのか?とビックリしました。「すごい!うまいなあ、沢山描いてみんなにプレゼントしてね。」と言い残して音楽へ向かいました。少々不安でしたが、他の子のことを考えると心が急ぎます。階段を上がりながら(かえるのうた)の輪唱が聞こえてビックリ。ピアノの上手なKさんに感謝!!2、3人の男の子がグェーグェーとおどけてはいましたが、涙が出るほど嬉しい時間でした。
2015年09月18日 23:32