『思い出さがし』 159・集団の中の子ども①
早くから集団の中で長時間過ごす幼な子を預かっている乳児院あります。そこでヘルパーをしている方にお話を聞いたことがあります。私も生後6週間後には母に子どもを預けて働いていたので、とても興味深く聞きました。生後6週間後の赤ちゃんでも最初はいつもと違うことに驚き、戸惑い、不安定でぐずりますが、3日もたつと養育者(保母さん)との相性が良いとすやすや眠るそうです。というより赤ちゃんが相手に合わせているのではないかと思ったと言います。でもある日、いつもの保母さんでない人に抱っこされた赤ちゃんは終日泣き続け、その人の声を聞いただけでも火のついた様に泣くので、私が担当することになったとのことでした。「誰でもいいのでなく、最大公約数を求めているのですね。」と笑っておられましたが、まだ若かった私には重い言葉でした。赤ちゃんが早くから声を聞き分けることは知ってましたが、抱っこされることを拒否する赤ちゃんは、特別な敏感性を持った子ではと思っていましたが、何人もの方が赤ちゃんの敏感さを話してくれました。母親の1対1の関係のみで育つ子と、日替わり、週替わりで担任が変わる生活の中で自己主張する赤ちゃんを思うと切なくなります。聞きなれた声、抱きなれた腕の中等、心地よさを早くから身につけていく赤ちゃんは、生きるために懸命に自己主張しているのだなと感動した日を思い出します。
2015年03月06日 23:55