『思い出さがし』 158・育つ環境④
56年間に沢山の一卵性双生児を見てきました。A君、B君のようなはっきりした例は1組だけだったので、印象が強くいつまでも忘れることがありません。4年生になって私は連続して担任だったのですが、B君は担任が変わり男性の先生でした。B君は成績優秀で決まりを守る模範生でしたが、男の先生にとってはもどかしい所があったのでしょう。男のグループに入れたいと願いドッヂボールの係として活動させようと考えたようです。真面目な子で懸命に考え係の仕事をしたのが負担になったのでしょうか、登校をしぶる様になりました。兄の担任として弟も同じエネルギーを持っているだろうと想像していましたので信じて待ってやりたいと思いました。B君の母親は自分のせいだと思うのか、急にB君を外の行事に連れ出すようになりました。並んだり待ったりすることは少しも気にしないB君は、やんちゃな子が静かになるのを待ったり、きちんと並んで集まれない子の多い中で、ひたすら指導者の指示を待って動いていたといいます。その健気さを誉めてあげたいと思ったのですが、母は自分の子育てを反省し、親であることに自信を失い始めたのです。何となく元気のない母と子を見て、1、2年の担任だった私を思いだし「一人っ子はやはりだめですね。親が神経質になってしまって、家の中が暗くなってます。」と話に来られました。「氏より育ちですかね。」と肩を落とされたので「確かに環境は大きな影響を与えます。ご両親は自分達の生活の中でB君を愛情深くお育てになったと思います。見守ってあげればきっとあの子らしい世界を自分で作り出して行きます。自信を待って下さい。見守る愛に子どもは必ず応えてくれますから。」二人はすてきな青年になりました。
2015年02月27日 23:28