『思い出さがし』 136・学力って何だろう②
子ども達は学力をどう考えるのか。もうずっと昔のことですが、5・6年を持ち上がった6年生に聞いたことがあります。今はもう53歳になった子ども達ですが、一番先に手を上げたのはクラス一の、ひょうきん者のH君でした。「物忘れの下手な人!」「えっ」「記憶力のいい人のこと?」「そうとも言う」みんな笑いながら固い雰囲気が吹き飛んで話し出しました。「見た目はボーっとしているが、やるなと思う所のある奴」「分からんことを分かろうとする力」「分かったことを利用する力」「やっぱりテストの点のいい奴」「テストなんて運や、前の日にたまたま勉強したところが出る時はラッキーやぞ。この前のテスト30点アップで先生からミニノートもらったもんね」「お前は運の強い奴やからな。リレーの時の他の組の子がコーナーで転んで一等になったもんな」「運も実力のうちや」「今、運の話しとるんじゃないよ。学力の話やぞ」「でも似とるかも知れんね。滝廉太郎なんかあんなに素敵な曲を作ったのに、なかなか認められんかったんや。でもね病床で子ども達が“春のうららの隅田川”と歌っているのを聞きながら有名になる前に死んだっておばさんから教えてもらったのよ」「へぇ、悲しい話やな」「あんなに素敵な曲で生きる力をもらった人もおるやろうね」「先生、数字で表せるもんでなくて、人を救う力を学力というのかも知れんね」ひょうきん者のH君のことばの後でチャイムが鳴りました。
2014年09月13日 23:56