『思い出さがし』 97・夏の小動物③
子どもが虫や小動物に興味を持ち出すと家の中は大変です。食卓の上にダンゴ虫がいたり、深めの皿におたまじゃくしがいたり、虫かごの中にてんとう虫やバッタやかまきりに交じって毛虫がいたりします。時にはゴキブリに名前をつけて虫かごに入れている子を見たことがあります。そんな子のお母さんは苦手だけど子どもの真剣さを大切にして、顔をしかめながら付き合っているのがわかります。我が家の末っ子は、虫嫌いな父親を刺激しないように小動物と付き合っていました。ゴキブリを見つけると、すぐに叩きつぶす親を知っているので、部屋の隅にゴキブリを見つけると「ホラ、殺されるぞ。逃げろ逃げろ。」と声をかけて、見えなくなるまで逃がしていました。蛙やみみずを嫌う父親のことを考えて、父親の目の届かない所で成長を見守っているようでした。これが父親だからスルーすることも多かったことでしょうが、母親だとしたら子どもは隠すところがなくて、きっとどこかで秘密の基地を作ることでしょう。現代はきれいな住居で衛生的な生活をすることが強く望まれているので、子ども達の冒険心は満たされていません。小動物と上手に付き合うためには、水たまりや雑草のある風景が必要なのですね。どこへ行っても整美された遊び場では、子ども達の科学的好奇心は揺すぶられないまま機械文明の中へ放り込まれることになるのでしょう。幼児期の小動物との触れ合いは、自然と共に生きなければならない人間をどんどん自然から遠ざけているように思えます。暑い夏休みを前に申し訳ありませんが、思い出さがしに時間をかけ、沢山の思い出を紡ぎ出し、ため込んで発信したいと考えました。そこで少し長い夏休みを頂くことにしました。秋になったら又お会いしましょう。ありがとうございました。
2013.7.5 青竜幼稚園・青竜第二幼稚園 園長 和田節子