『思い出さがし』93・遠足の思い出④
サイレンが鳴ると水かさが増すことを知っていたのですぐあがりますが、子ども達だけで行くと大変なことになります。昔、子ども達はガキ大将を中心にして集団でよく川遊びをしたものです。私もおてんばな女の子だったので、男の子の中にいつも一人だけ女の子がいるのが当たり前の集団で、野山を駆け回っていました。リーダーは6年生のスポーツマンの子で名前はりょう君でした。その弟のつとむ君は泣き虫でしたが、色んなことを知っているので博士と呼ばれていました。特に天気予報士の様に天気を当てる能力がありました。大体10人前後の集団で、一番年令の低いのが私の弟で2年生でした。兵庫県の山奥では、川遊びか山遊びしかありません。広い野原といったら学校の運動場しかありませんので、谷川につながる山合いのくねくねした川は子どもの冒険心を刺激します。狭くなったり広くなったりする川は、流れの速さも違って面白くて時間を忘れます。4年生のつとむ君は流れが苦手で、川の淵の草むらを走って遊びに参加していました。時間を忘れて遊びほうけている私達に突然大声で「あがれ!あがれ!」と叫んだのです。誰も聞いてくれないので、根っこのついた草を掴んで投げながら「あがれ!おぼれるぞ!」と泣きながら叫んだのです。リーダーのりょう君が「オーイ!あがるぞ。ついて来い!」と言って皆があがった数分後、ぐ~んと水かさが増えた川は竜の様に暴れ始めました。山の方から黒い雲が走って来ました。