『思い出さがし』 87・友だち作り③
友だち作りを急ぐと、本人は自分を見失うのではないかと思うことがあります。
かつて3才児の女の子が下の子が産まれるため、
母の里へ帰っていて、6月に入園して来た子がいました。
その子は4月5月とそのクラスの子ども達がそろそろクラスに慣れて、
お友だち意識も芽生えた頃だったので、クラスに入り辛いだろうかと思い、
私と手をつないで園内をゆっくり歩きながら3才児クラスに案内しました。
クラスの入口で担任の先生の名前を呼んだ時、
先生のまわりで遊んでいた女の子数人が、さっと私たちの方を振り返りました。
私は新入児を紹介しようと思って一歩近づいた時
転入の新園児が女の子の中の一人を指して
「わたし、この子キライ!」と叫んだのです。私がびっくりして目線を下げた時、
その指さされた女の子も叫んだのです。「私もその子キライ!」
「あっ、A子ちゃん、みんな待っていたのよ。おはよう。」
と担任の先生はA子ちゃんを抱き上げてくださいました。
私は指さされたB子ちゃんの肩を抱いて「おはよう。A子ちゃんのこと前から知っていたの?」
と聞くと、少し涙目になって「知らんかった。」「初めて会ったの?」「うん。」と言って
体重を私に預けてきます。きっとショックだったのでしょう。
いきなり「キライ!」と知らない子に言われたのですから。
その後2人はレベル的には同じ高さの子で、リーダー格だと担任は感心していました。
瞬時に自分と同じレベルの子を意識するなんて、きっとどの子もそんな能力を持っていて、
友だち作りにその力を利用しているのではと2人の関係を見つめることにしました。