『思い出さがし』 59・秋の恵み①
「まっかだな、まっかだな」と歌う子どもの声が窓から聞こえて来ます。「つたの葉っぱはまっかだな」と歌い続ける子ども達が園庭に出て来たので「つたの葉っぱって知ってる?」と聞くと、ほとんどの子が知らんと首を振ります。「でも、もみじって知ってるよ。」と割り込んで来る子がいます。「わたしも知っとる、手みたいな葉っぱやろ。」「絵はがきで見たら、めっちゃきれいやった。」「もみじ組ってそのもみじやね。」と口々に集まって来ました。みんな目が輝いています。「先生、秋やね、夜になると虫が鳴いてるよ。涼しい声やよ。」「ほうや、涼しくなったし、涼しい声で鳴くげんね。」「セミの音って暑苦しいし、やかましいね。」「なんかセミの声いつの間にか聞こえんくなったね、不思議やね、どうして秋やってわかったんやろ。」「そんなん虫の方が知っとるんや、だって体で温度がわかるんやって、パパが言っとったよ。」「ふーん、虫ってかしこいがやな。」「温度って体でわかるようになっとるんやね。」「ぼくらだって寒い日とか暑い日はすぐわかるよ。」と言い出した子を中心に秋をさがそうということになりました。「柿の実が赤くなる。」「エー!だいだい色や。」「違うよ、柿色っていうんだよ。」「でもおいしいね。ちょっとかたいげん。」「私のうちになるよ。でもカラスのエサにするんだって、バァちゃんが言っていたよ。」「コスモスが咲くよ。」「ドングリ!」「クリの実も。」「いちょうの葉っぱが黄色くなるね。」「朝、水道の水、冷たくなるよ。」「スズ虫の声、すてきだね。」「さくらの葉っぱが赤くなる。」次々に秋を伝え合っています。(続く)