『思い出さがし』 43・かたつむり
4才児は小動物が大好きでよく遊びますが、小動物にとっては受難の時でもあります。とにかく子どもは手加減をする子もいますが、どんどんエスカレートすると夢中になって小動物を傷つけてしまうのです。木の枝にかたつむりを這わせていた4才児達が、余りにもノロノロしているので手で押し上げていると、その力に負けて枝から転げ落ちたかたつむりが、少し水をはっておいた水槽の中に落ちてひっくり返ってしまいました。それを拾いあげてもう一度木の枝に乗せるのですが、カラの中に首も角も引っ込めてしまってなかなか乗ってくれません。「がんばれ、がんばれ。」と言う子「つの出せ、やり出せ、目玉出せ。」と歌う子、へとへとになっているだろうかたつむりを思って、ストップをかけようと思っているところへ、年長組の男の子が2、3人通りかかり「静かに休ましてやらんと、顔出さんよ。」と言っているのが聞こえました。「それに、そんなに強く持ったらカラがつぶれて死んでしまうぞ。気をつけな。」と付け加えています。かたつむりを手にしていた4才児は、そっと手を離してかたつむりを葉っぱの上に置きました。それを見つめる4才児。「あっかたつむりのお家ちょっとつぶれとる。」と大発見します。「どれ?どこや?」とのぞきこむ年長児。「ほんとや。でもこれくらいなら大丈夫や。少しそっとしておいたら元気になるよ。まだ割れとらんし、水入って来んし。」と勇気づけてくれます。ほっとした空気が流れました。体験から学んだことをしっかり伝えている年長児の存在がとても嬉しく思え、こうして伝え合う世界が幼稚園にあるんだなと、集団のありがたさを大切にしたいと思いました。