『思い出さがし』 34・小さな生命
春になり、雪どけの水で川の流れが豊かになると思い出すことがあります。それは、川のふちで子犬が数匹投げ捨てられていたことです。学校の帰りにそれを見つけた娘が「待って!」と言って駆け寄り、最後に残った子犬を持って来ました。白い犬で顔や横腹に黒いブチのあるかわいい犬でした。廊下に置くと、足元がすべって「ボコ」とアゴを打ちつけるので大笑いをしました。末の息子が大変かわいがって一緒に寝る夜もありました。まだまだ母親のおっぱいが必要な子犬でしたので、毎日ミルクを飲ませ抱っこして大切に育てました。もう一匹ポコという名のメス犬がいたので、ブチのある子犬はブッチーと名付けられました。娘は時々川の中を流されて行った子犬のことを思って泣いていましたが、みんなに可愛がられてどんどん大きくなっていきました。時々ふとんの中でおもらしをするブッチーを息子はかばって「ぼくがおねしょしたんや。」と言ったりして家族からかわれたのも懐かしい思い出です。この頃新聞に悲しい記事が載りました。確か西日本の方だったと思いますが、子犬を親にかくれて飼っていた小学4年生の男の子が、飼っているのを母親に見つけられてしまいました。川へ捨てに行った母親の様子を偶然下校時に見つけた4年生の息子は、子犬を助けようと川へ飛び込み水死してしまったという記事でした。ショックでした。私の息子はブッチーを撫でながら「このお母さん、一生苦しい毎日が続くんやな。」とつぶやいていたのが心に残ります。