『思い出さがし』 28・ことばの育つところ
5人の子ども達がまだ小さくて、みんな同じ家で家族として暮らしていた頃、我が家には、常に他人様の子どもがいました。長い子で4年間、短い子は2週間、家の子と共に生活していました。年齢は生まれてすぐの子と高校3年生まででした。中には、兄妹の子もいました。私の家に暮らし始めた頃はことばも少なく、食事も偏食の子が多かった様です。特に野菜がダメでした。れんこん、ごぼう、ふき、なっぱ、しいたけ、ピーマンなど苦手でした。ピーマン、しいたけは分かりますが、他のものは口にしたことがないものが多かった様です。母親と共に調理した経験など全くなくて、菓子パンやレトルトばかりのようでした。それも食卓を囲む経験が少なく、テレビを見ながら菓子パンを食べ、ジュースを飲んで各々の食事は終わっていた子が多く、食卓を囲んだだけでプレッシャーになりテレビの前へ行こうとする子もいました。テーブルを囲まないと話しはまわりません。我が家の5人が色々おしゃべりするのをキョトンと見ている子もいました。食卓を囲んで食事をすることで話しが広がり、ことばが行き交うことで沢山のことばを覚えることを実感しました。れんこんを出した時「このおいもどうして穴あいとるが?」と聞いた3才児や5才児を思い出すと、幼児期に色んな話のキャッチボールのできる食卓の大切さと、ことばの関係を知りました。当たり前だと思っていることが当たり前でない世界にいることを沢山の人に知ってほしい、ことばが育つところは家庭の食卓だと理解し、楽しい食事を大切にしてほしいと思います。