『思い出さがし』 27・心友作り
幼なじみという言葉には、淡い思い出と共に強い絆を感じるものです。私の友人の中には、その幼なじみと生涯を共にした子が何組かあります。思い返せば懐かしい思い出の中に2人います。野山を駆け巡って遊んだ日、走ることが大好きだった私の後を追いかけて励まし合ってついて来た2人でした。色白で優しい時子ちゃんの手を引いて、汗をふきながら何度も私の名を呼んで行き先を確かめていた良一くん。時子ちゃんがもう動けなくなると自分もしゃがみ込んで「少し休んで行こうか。」と言ったのでしょう。優しく肩に手をかけていた良一くん。夕日の中に見える2人の姿は絵の様に美しいものでした。やんちゃな2,3人の男の子がはやし立てると、立ち上がって時子ちゃんの手を引き「今、行くからねぇ。」と叫んでいる良一くんの照れた顔がとても可愛く見えました。確か5才ぐらいの秋の夕暮れだったと思います。こうして大人の目の届かない所で、思い切り自由に遊んだ日の積み重ねは、友だちの絆を深めてくれます。私は、この秋の日々を最後に日本を離れ、北朝鮮に渡りましたが、その時の友だちが再びふるさとに戻った時、思い出の折り紙で折った折り鶴を大切に仏壇に保管してくれていました。時子ちゃんと良一くんの2人は、結婚して横浜に住み、やんちゃ坊主だった勇くんと武夫くんは、折り鶴を届けに来てくれたあと都会で働き、時々手紙をくれました。こんな関係を心の友と呼ぶのだと思います。会うと必ず、幼い日の野山が心を結びつけてくれるのです。幼児期に心の友を、と思っています。