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前園長日記/和田節子ライブラリー

『思い出さがし』 219・小さな命③

双生児の片方が、その小さな命を私の腕の中で終わってしまったという体験は重いものでした。その時の小さな胸や手足や弱々しい泣き声が何ヶ月も私を平静でいられない原因となったのです。友人との話し合っているいる時も、少しの間があるとすぐ表情が曇り、ため息をつく陽になったと言われました。自分では平静でいるつもりですが、心の中の重い荷物はそんな状況を許してはくれません。「何かイヤなことでもあったの?」「誰かに何か言われたの?」等、心配してくれる友人達に思い切って赤ちゃんの死と向き合った話をしました。「えっ、心臓は音がするの?」「人工呼吸ってどうするの?」「小さいってどれくらい?」「どんぶり茶碗の中で産湯を使ったという話を聞いたけどそれ位でしょうね。」「だっこしたら腕の中から抜け落ちそうでしょうね。」「若いお母さんは前から覚悟していたんでしょうね。」「自分の子どもだったらどうするだろう、想像がつかないわ。」「双子が生まれると昔は普通じゃない不吉だと言って一方の子を川に流したり山へ捨てに行ったりしたんだってね。」「随分酷いことをしたものね。竹取物語のかぐや姫の伝説もそうした捨て子のことだったかも知れないわね。」「酷い話よね。生命を軽く見ているよね。」「昔に生まれなくて良かった。私の兄は私と双子なのよ。二卵性だから顔も似ていないし、性格も正反対なので楽しいことも多いけど腹の立つこともあってイヤな奴だと思うけど心強いことも多くて、兄妹ていいなあと思うわ。」「今は双子がもてはやされる時代だもの。うらやましいと思う。」雑談は何時間も続きました。
2016年05月15日 23:58

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