『思い出さがし』 214・小さな親切④
りょうくんとわか子さんでした。終わりの会でみんなの理由を聞きながら、首をかしげているりょうくん。ただニコニコ笑って聞いているわか子さん。私は2人の話を聞いてみたくて毎日どうしようか迷っていました。あの2人ならいつか自分の言葉で自分の考えを言ってくれるだろうと思っていたのです。2週間が過ぎても2人はいつもの表情でした。3週目に入って、はじめくんが手をあげました。「りょうくんに質問していいですか。」「はい、どうぞ。」私は彼にある期待を込めて指名しました。「りょうくんは今日ぼくが給食当番のエプロンを忘れて来たのを思い出してウロウロしていたら『ぼくのを使って』って貸してくれたのに〇がついていません。ダメだよつけなきゃ。」と言ったのです。「りょうくん、答えてあげて。」と言うと「ごめんなさい。ぼくはたまたまお母さんが早めに洗濯をして持たせてくれたから貸しただけで、そんなの親切というのかな、と思っていたんだ。」と耳たぶまで赤くしながら恥ずかしそうに答えたのです。教室が何となくざわつき始めました。(親切やと思うね)(お母さんに〇をあげたらいい)(りょうくん、嬉しかったのに文句言うのヘンやね)私はしばらくざわつく教室を黙って見ていました。
2016年04月10日 23:57