『思い出さがし』 201・うさぎのランちゃん②
小さなランは絵本好きなSちゃんの小学校で飼育していたウサギ小屋で生まれた子ウサギでした。生まれた時から右耳の先が折れていて、とびはねる力もあまり強くなく、十分なエサにありつけなかったらしく、他の子ども達より一回り小さかったのです。そんなランをSちゃんは、ひそかにランと名付けて毎日飼育小屋へ通っていたのです。ランと名付けたのは「がんばって走れ!走れ!」という励ましの思いを伝える名前だったのです。休み時間になると必ず小屋の中を心配そうに眺めているSちゃんを見ていて下さったのは教頭先生でした。長休みの時間、ジッと小さな子ウサギを見て「負けちゃだめ!ちゃんと食べなさい、ほら早く取らないと横取りされるよ。」と声をかけるSちゃんを見ていた教頭先生が声をかけました。「あの小さい子の名前はランちゃんでいうの?」ビックリしたSちゃんは恥ずかしそうにうつむいてモジモジしていました。「いい名前だね。ランちゃんで呼んでみようね。ランちゃん。」するとみんなはビックリして自分で掘った穴の中へ逃げ込んだということです。でも、1匹だけランちゃんがウロウロしていたのです。Sちゃんは思わず「ランちゃん、ランちゃん大丈夫、おいで。」と優しい声で呼びかけました。すると、どうしたことでしょう、ランちゃんがSちゃんの所へやって来たのです。「ああ、神様ありがとう。奇跡が起きた」と絵本に書いてありました。どんなにか嬉しかったことでしょう。その上、教頭先生から緑色のエサをもらってサクの間からランに直接エサを渡すことができたのです。
2016年01月08日 23:58