『思い出さがし』 192・変わった子④
O君の投げたボールが3年生の私のクラスの子の所に転がって来ます。すると「オーイ、そのボールのぼくのやぞ。」と突進して来るO君にオズオズとボールを渡す3年生に「早くしろ!」と怒鳴る声は3年前のO君とは別人の様でした。その上、チャイムがなると手にしたボールを高く上げて「オイ、誰か体育館に返して来い!」と言って走って下足箱に運動靴を入れているO君を見て、どうしてこうも変わるのかと肩を落としてクラスへ帰った日のことを思い出します。「先生、どうしたん?頭、痛いが?」「なんか元気ないよ。」と3年生のヤンチャ坊主がそばへやって来ます。「ごめん、ちょっと心配なことがあって心が沈んどるんや。」「へえ、心が沈むと、どこ行くが?竜宮城?」「先生行ってみたいな。」「だめや、ばあさんお断り!!」「そうや、そうや、アハハハ。」私も一緒に笑ってしまいました。「先生!心浮き上がった?」「ぼく釣り竿で釣ってあげる!」「心は魚じゃないぞ。」子ども達の笑い声に励まされて心が軽くなりました。「先生、O君のこと気にしとるか?」と言ってくれたのがクラスでユニークな考えを出すS子さんでした。S子にとってはO君はお兄さんの様な存在だった様です。同じ子ども会で仲良くしているらしく、いろいろ話してくれました。給食が済んだ後、小さな声で話してくれました。「先生、O君ね、良い子でいるのやめるんだって。」「へえ、どうして?」「息するのがひどいがいて。」「O君が言ったの。」「そう、『〇〇しなさい、〇〇はダメよ、どうして分からないの?』って言われて『もうイヤだ!イヤだ!』ってお兄ちゃん叫んでいた。」
2015年11月06日 23:56