『思い出さがし』 180・終戦前夜
少し夏休みで2週間ぶりの園長日記です。70年前のこの日、8月14日、北朝鮮の鉄原という所にいた私は日本人町にあっという間に広がった話を聞き「何というバカな!」という思いと「もし本当なら奇跡だ!」と心が弾む思いもあった。「今、日本では梅の木に一斉に桜の花が咲いたんだって!」「日本中の梅の木に咲いたんだって!キセキが起きるのよ。」日本人町のおまわりさんの奥さんが皆に言いふらしていたらしい。私の母は「節子、日本は敗けるよ。戦争は終わるよ。」と厳しい表情で言い、「荷物をまとめようね。」と立ち上がった。そして、「こんなバカなことを言って信じさせようとするほど、この戦いは惨めな負け方なんだ。」と呟いた。小学4年生の私には、どこまでも自国の勝利を信じ最後には、キセキを祈るまで追い詰められたことが少しわかっていた。学校から男の先生がどんどんいなくなり、駅や大企業の工場や中学校に爆弾が連日落ちる様になっていたので、日本へ帰れないのでは、という不安の中で暮らしていたので、キセキの様な話に気を取られることはなかった。母はとても冷静だったと思う。母の強さは心強かったが、いつも頭ごなしで気が滅入ってしまう。しかし、家族を守ろうとする母の存在は父が入院していた中だったのでありがたかった。
2015年08月14日 23:56