『思い出さがし』 179・親と子④
「勇くん」という名前で亡くなったお父さんが勇敢で人を助ける子に育ってほしいと願ってつけたそうです。その頃、家の裏を流れる小川の向こう側に父を亡くした女の子いることを知りました。裏庭から見える女の子の家には美しくて若いお母さんといつも淋しそうに本を読んでいる女の子が見えました。時々おじいちゃんとおばあちゃんが果物やおもちゃを沢山持って来て下さるようで女の子の嬉しそうな笑い声を耳にしました。祖父母が仏壇に向かって合掌している横で、ちょこんと座っている女の子は「良子」と書いて、「りょうこ」と読むらしく、おばあちゃんの方を向いて「りょう子ね、あのね。」と甘えている風景をよく見ました。小学校2年生という話でしたが幼く見えました。いつもおじいちゃんの背中にくっついて「あのね、りょう子はね。」と離れようとしません。きっとお父さんにいつも甘えていたのでしょう。おじいちゃんも困った顔をしながらも、よく抱きしめていました。お母さんに「いつまで、くっついているの。おじいちゃんもお忙しいのよ。」と言うと「だって、私のおじいちゃんだもん。おじいちゃんといっしょに寝るもんねえ。」と、だんだん声が大きくなります。近所のおばちゃん達は、お父さん子だったから仕方がないね。気持ちは分かるけど・・・ねえ。」と話し合っていました。勇くんと良子さんの2人は父の死をどう受け止めたか、又、まわりの大人達がどう受け止めたかによって育ちが大きく違って来ることを知りました。
2015年07月24日 23:56