『思い出さがし』 164・出会い②
敏ちゃんは余り体力がない子でしたが、辛い時は、えくぼのある笑顔が少なくなります。いつもとなりにいた私には、それが分かり敏ちゃんのおばあちゃんに伝えました。やっぱりお医者さんに行くと「2、3日は柔らかい物を食べて、お外はダメですよ。」と言われてしまうのです。おばあちゃんは「せっちゃんはお医者さんみたいで助かるのう。」と肩を叩いてくれました。でも、その2、3日の寂しかったこと。毎日野原で摘んだ草花を持って、敏ちゃんをたずねました。その時、初めて敏ちゃんにはお母さんがいないことを知りました。おばあちゃんが仏壇を開けて「これが敏子のお母さんだよ。」と教えてくれたのです。茶の間でお粥を食べていた敏ちゃんの方を見ることが出来ませんでした。仏壇の中のお母さんは敏ちゃんそっくりの優しいえくぼの笑顔の写真が私を見ていました。涙が止まりませんでした。声も出さずに涙を流す私をおばあちゃんは「ごめんな、もっと早うに言っておけばよかったのに。」と抱きしめてくれました。5才も終わりの頃でした。あの時の悲しさは生まれて初めての体験だったからでしょうか。「敏ちゃん、さようなら。」と言うのがやっとでした。その夜、私は40℃近くの熱を出して、母をビックリさせたといつも言われていました。
2015年04月10日 23:36