『思い出さがし』 163・出会い①
4月を迎えると桜の花のトンネルで出会った幼い頃の友人を思い出します。日本を離れて海を渡った北朝鮮の異国へ出かける頃でした。伏見川の川原は両側の桜並木がとても美しいピンク色の桜でいっぱいだったのです。でも別れの辛さがその美しさを感じる心をなくしていたのでしょう。あまり覚えていません。いつもいつも隣にいて笑ったり泣いたりけんかしたりして「あしたまたね。」と言って次の日も必ず会えた二人だったからです。1つ年下の敏ちゃんは、それは優しくて控えめで歌の上手な女の子でした。近所のおばちゃん達は「うぐいすみたいな美しい声だね。」と話していました。私は嬉しくて「ありがとう、おばちゃん。私の仲良しの敏ちゃんよ。」と自慢しました。柔らかい日差しの中で木の切り株に腰かけてゆったりと歌う敏ちゃんの「ゆりかごのうた」が大好きでした。「春よ来い」も歌ってくれました。私は金属的な歌声なので、柔らかい敏ちゃんの歌はほっこりと優しくて思わず耳を傾けてしまうのです。おままごとをする時もいつも私はお父さんで、お母さんは敏ちゃんです。時々2役する時、私は男役で敏ちゃんは女役です。そんな二人が出会ったのが桜並木のトンネルで、雪の様に舞う桜の花びらを両手を広げてうけていた時です。「わあ、きれい!」とかわいい声が私の心をつかんだのでしょう。すぐに友だちになりました。
2015年04月03日 23:55