『思い出さがし』 153・立ち直る力③
9月の初め頃、疲れが重なったのでしょう、終わりの会には気力もなくなり当番の明日のお知らせを聞きながら寝入ってしまった様です。「明日の当番はA君とNさんです。よろしくお願いします。」という呼びかけに返事はなく、Nさんの声だけが聞こえました。NさんはA君の片腕と引き上げながら「頑張ります。」と答えたのです。2人の様子を見て、はやし立てたのはO君です。それを見て数人の仲間達が、はやし立てました。「居眠り坊主」「居眠り坊主」の声は波の様に広がって、うねりの様にかえって来ました。私はA君がビックリした顔で何が起こったのか分からず、しばらくまわりを見渡したのを見て声をかけようとしました。その時、O君が大声で「ヨー!お2人さん!」と叫んだのです。Nさんが両手で顔を覆って泣き出しました。が、一瞬大声にひるんだA君が「やめろ!!」と今まで聞いたこともない声で言い放ちました。そして、「Nさんをからかうのはやめろ!悪いのはボクや。Nさんは前々から居眠り坊主と言われているボクのことを助けてくれていたんや。ボクが毎日朝5時頃から両親の手伝いをしていることを分かっていてくれていたんや。人間として仲間として素晴らしい人やと思う。ボクは両親の働く姿を見ていろんなことがわかったんや。Nさんありがとう。」私は静まり返った教室で、A君とNさんの手をとって「ありがとう。」というだけでした。
2015年01月23日 23:44