『思い出さがし』 151・立ち直る力①
若い社長さんが最近の社員のことについて弱音を吐いていました。小さな土木建築の会社を父から引き継いだのですが、長年仕事をしてきた70才代の方がもう辞めたいと言われて、若い人を2名採用してのですが、仕事を教える前に教えるべきことが多すぎてヘトヘトとのことでした。先ず挨拶から教えたといいます。「おはようございます。」「いらっしゃいませ。」「ありがとうございます。」「よろしくお願いします。」「失礼しました。」「さようなら。」が言えるまでに半年かかったといいます。ようやく仕事を教えようとしたところ「辞めたい。」と言って会社を休んでいるとのこと。「挨拶ができるようになった時、しっかり誉めましたか?」と聞くと「そんな当たり前のことで誉めるんですか?」という答え。「当たり前のことが誉められずに生きてきた子は立ち直る力が弱いような気がします。小さな時のささやかな行動をしっかり誉められたり認められたりされなかった子は、心のバネが育っていないような気がするのです。」「えっ俺なんか親からそんなに誉められたりした覚えがないんだけど、社会人としてはまともに育ったと思うんだがな。」「確かにその通り。でもあなたの意識しないところで、ご両親はあなたを認め続けてきたと思うよ。」「そうですかね。今の子は物資的に恵まれていても、記憶にない時代に体全体で受けた親の思いや愛を体が覚えているのですかね。」「うまいこと言うね。その通りだと思うよ。体で覚えた親の優しさや言葉がけが、いざという時その子を立ち直らせてくれるのだと思っているんだけど。」「少しわかった。」明るい笑顔が戻ってきました。
2015年01月10日 23:55