『思い出さがし』 140・運動会で学ぶ②
かけっこで追いつかれ追い抜かれる悔しさは陸上部にいた私にはよく分かりました。駆け寄って抱きしめてやりたいと思いました。1位から3位になったH君は仲間達のいろんな慰めや励ましに声を上げて泣き出しました。担任の先生が「H君、最後まで頑張った。いい走りだったよ。」と肩を優しくなでておられました。涙をぬぐい泣きじゃくりながら席に戻るH君。「H君が遅いんじゃないよ。他のクラスが速すぎたんや。」と大声で言う子がいて、まわりがみんな「そうや、そうや」と答えていました。当時6年担任で隣りの場所だったのでH君の表情が見えました。唇をぎゅっと結んでじっと白いラインを見つめていたH君に自分の小中学生の姿が重なりました。今では転がした方が速いと言われ陸上部で活躍したことを信じてくれないわが子達がいますが、H君と同じ思いをしたことを忘れません。そのH君の担任になったことで「秋は嫌いな季節だ」と言ったことを子ども達から知らされて「ああ、あの時の思いが続いているのか」と重い気持ちになりました。2年生もリレーがあるからです。予想通りH君は出場拒否しました。ガンとした拒否でした。男女4人ずつの選手としてはどうしてもH君が必要だったのです。「明日、決めよう」と言う私の提案で「じゃぁ、明日ね」と下校時を迎えました。私は中庭でH君を見かけたので、ストレートに声をかけました。「去年のリレー、悔しかったね。先生も小学校の時、悔しくて泣いたんだ。本当に悔しかった!」H君は裸足で私に近づき「先生、わかる?!わかってくれる?」と強い語調で言いました。
2014年10月10日 23:58