『思い出さがし』 233・子どものつぶやき②
絵本が大好きなA子ちゃんは、おとぎ話にも詳しくみんなに一目おかれていました。クラスの中でもいつも絵本を持ってお友だちと話をしている子でした。「A子ちゃん、今日はどんな絵本を持って来たの?」と先生に聞かれて少し恥ずかしそうに体をくねらせて「大きい組さんから借りて来たの。」と先生。「そうや。明日も貸してくれるって言うし、今日中に読まんとだめなんや。」とA子。「A子はすらすら読めるし、もし良かったらお友だちに読んであげてね。」と先生。「そんなら私、練習して来るし、この本、お家持って帰ってもいい?」とA子。「いいよ、いいよ。練習して上手に読める様になったら先生に知らせてね。朝のお始まりの時、お願いしたいしね。がんばってね。楽しみや。」と先生はA子の肩を抱き寄せて優しくポンポンと叩きました。嬉しそうに肩をすくめるA子。それを見ていた子ども達が「どんな本や?」とA子の胸に抱いている本を指して言いました。「えっ長い名前やね。」「か た あ し だ ちょう の エ ル フ」と一字一字を拾い読みする子が何人かいて「なんか難しそうやな。」A子はペラペラとページをめくって見せています。「字いっぱいやし面倒くさい。短いとオレ読めるけど、長いとスラスラと読めん。やっぱりAちゃん今度読んでね。」「頼んだよ。」「がんばって。」と言って集団が去って行きました。その後にA子と仲良しのB子が残りました。A子はページをめくって指で文字を押さえながら読み始めました。それを尻目にB子は私の横を通る時に呟いたのです。「ママに同じ絵本買ってもらおう。」静かな挑戦状と思えました。
2016年09月11日 23:57