『思い出さがし』 235・人のうわさ①
く夏休みのある日、一本の電話がかかって来ました。「もしもし。」と名のろうとしたら「あっごめんなさい。先生が直接出られたのでびっくりしました。」と早口で「すみません、すみません。私の思い違いでした。」と何度も謝って受話器を置かれた様です。どんなことがごめんなさいなのかさっぱり分からず色々イメージしている時に、また電話のベル。「もしもし和田です。」と受け取ると「あら、先生。園長先生ですよね。すみません。もうお辞めになって園に出て来ていらっしゃらないって聞いて、確かめようと思って電話をかけさせてもらいました。ごめんなさい。亡くなったと聞いてもいないし、入院されたんかと心配してたんです。」と明るい声が返ってきました。一本目の電話は園長が亡くなったという噂に驚いてお掛けになったのでしょう。二本の電話は聞き覚えのあるOBの方のようでした。懐かしい思いで受話器を置きました。かつて入院中の私の友人が「たった3日間の食あたりの入院だったのに死んだことになっていて、主人が見知らぬご婦人からお悔やみを言われたことがあったねよ。だから伝わったことなのか、噂って怖いなぁ。」としみじみ話しとくれたこと思い出しました。話術の見事な友人の言葉に相づちを打っただけでさも事実の様に伝えられた思い出があります。
2016年09月25日 23:58