『思い出さがし』 110・お正月いろいろ④
昭和22年のお正月は金沢でした。父も終戦後満州から帰って来ていたので、久しぶりの一家揃ってのお正月でした。近所の子ども達がぞろぞろ兄弟姉妹でやって来ました。父が軍隊からもらって来た金平糖がお目当てでした。甘いものがなかった時代なので評判になったのでしょう。トゲトゲの金平糖が口の中で少しずつ溶けて、甘さが身体に染み込む様な幸せ感は本当にすばらしいものでした。みんなは笑顔になり、小さな火鉢のまわりとこたつのまわりは、春の暖かさに包まれた様でした。そして誰かが嬉しそうに「旗源平したいな。」と言うと、すかさず何人かの男の子が「お宮さんのおじちゃん呼んで来てもいい?」と叫ぶのです。兵庫県生まれの父が「旗源平って何だい?」と聞くと「あのね、あのね、サイコロを転がして旗を取るんや。」「サイコロは2つやぞ。」「チンチンカモカモって言うんや。」「めがいちってあるよ。」「しのにもあるよ。」と口々に言い出すので、母がいつもの大声で「一人ずつ言いなさい!」と叫ぶと、みんなシーンとなります。「遊び方を知ってるのが、お宮さんの神主さんなの?」と母がダメ押しすると、わんぱく坊主達が神妙な顔で「ハイ。」と返事する姿がおかしくて、私が笑うと、数人が神社へ向かって走りだし、神主さんの楽しい指導で、畳と畳の間にたくさんの旗が立ち並ぶお正月が懐かしいです。