『思い出さがし』 108・お正月いろいろ②
極寒の地でのお正月は、大人達に説教されたり、拒否されたりすることなく始業式前日まで続きました。ある日2年生の男の子の投げた馬糞が弟の耳に当たり真っ赤になりました。泣き出した弟の前に膝まづいて「かんにんしてください。かんにんおねがいします。」と氷の地面に何度も手をつく子を見ていると切なくなり「ダイジョブ!イタイイタイ少しだけね。」と日本語を並べる私に向かっても涙を流して謝るのです。「ダイジョブ。イタクナイヨネ。」と弟に聞くと、弟は泣きじゃくりながら「チョットイタイ。」と答え、私にしがみついてきました。「あったかい所へ行ったら大丈夫!」と弟の肩を抱いて「ゴメンネ。おうちに帰るね。また遊ぼう。」と言って家へ帰って来ました。弟は帰るとすぐ母が作っておいてくれたおにぎりを3個も食べて眠ってしまいました。オンドルのあったかさで私もウトウトしていた頃、よく通るいつもの母の声が聞こえました。「まあ、こんな寒いのに皆さん裸足のままどうしたんですか?」と聞いています。やがてみんなの声で「ゴメンシテクダサイ。かんにんしてください。」の大合唱です。日本名ヒデちゃんのご家族でした。私は飛んでいって「大丈夫!いっぱい食べて寝ています。」とジェスチャーを交えて話しました。「イルボンサラミ。ありがとう。かんにんありがとう。」そう言って鼻水を垂らしたおじぃちゃんの姿を今も忘れません。裸足は謝罪の証だったのでしょうか。