『思い出さがし』 106・良い子ってどんな子?④
黙って抱っこしているうちに陽ざしが落ちていき寒くなりました。「寒くない?」と聞くと「ちょっと。」と言うので、膝用の小さな毛布を背中にかけてあげると、泣きじゃくりながらも優しい声で「ありがとう。」と答えてくれました。しつけの行き届いた良い子なのです。他のクラスの先生からも「M君っていい子やね。あんな子が一人いるとモデルになってくれるしうらやましい。一日貸してほしいな。」とよく言われました。日々親の重圧と愛に飢えた小さな魂をどうやって守るか、自立させるか、新しい課題をかかえることになりました。誰かに愛されているという思いがあれば、そこを基地として生きていけることを伝えたい。その基地を見つける力を身につけさせたい。良い子でいなければならない時間を少しでも減らして楽にさせてやりたい。この子と一緒にいると楽しい、面白いと思われる友人を見つけることから始めました。同じ兄弟関係を持っているT君は、M君の妹のことを知っているらしく「ボクの妹ってスカート履いたの見たことないけど、M君の妹かわいいな。」と言っていたことを思い出し、二人を共通の話題で話し合わせるようにしました。冬休みの福笑い大会にM君は呼ばれたらしく、T君の妹の変な顔の福笑いがおかしくて大笑いをしたと伝えてくれました。時々、遠慮がちに私の膝を独占するM君は、T君を基地としたり、私を基地としながら1年生を終えました。 年12月27日 18:19