『思い出さがし』 102・がまん強い子を見つめる②
「オオカミが来たぞ!」と何回もウソをついて大人をだましているうちに、本物のオオカミに追いかけられて食べられてしまったというお話しを、小さい時に子ども達は必ず聞いたり、読んだり、紙芝居を見たりしています。大げさな物言いをする子とは少々違うのですが、ワンパクで、よく友だちをからかったり、だましたりする子は、この話を聞く時必ずバツの悪そうな顔をします。(ハハァ、何かやらかしたな)と思って話に一呼吸おくと、チラッと視線が動きます。こちらもその動きに合わせると、ある子を見つめて反応を見ています。被害者の思いが気になるのでしょう。見つめられた子は静かに私の話を聞いてきますが、ふと視線を感じたようでワンパク坊主の方に視線を移すが、また何事もなかったように手作り紙芝居を見つめている。その様子をじっと見ながら肩をすぼめるワンパク坊主。自分のやったことに相手がそんなに傷つけられていないと思ったのか、少々後悔していたのか、席をその子の後ろに移動して「ウソついたしやな。」とつぶやきました。読み終わって、どうだったと感想を聞くと口々に「ウソついたしや。」「オレ、こんなことしんし。」「ウソつきはドロボウの始まりやし、バチ当たったんや。」と言い合っています。その中に一人手を上げたのは静かながまん強い子です。「先生、何回だまされても今度は本当かもしれんと思う大人がいたら、子どもは助かったんだと思います。」と控えめに話したのです。がまん強い子はこんなに深い思いを持っていることを知りました。