『思い出さがし』 95・夏の小動物①
夜になり、周りの田んぼから蛙の声が聞こえ出すと、子ども達の仲間に変化が現れ始めます。虫の好きな男の子は水面を走るアメンボウを見ると、足が止まって家路へ着くのが遅くなります。我が家の末っ子は生き物が大好きで、蛙を捕まえて来た日の背中にはランドセルがありませんでした。ズックの片方にはおたまじゃくしがいっぱいです。泥と葉っぱのくっついた裸足の片方が妙に白いのは、春なんだなぁと何となく納得しました。北陸の長い冬は、子どもの足の白さが証明してくれる様な気がします。小動物達も春を迎え、素敵な相手を見つけて二世を作り出して来たのでしょう。すばしっこく動くおたまじゃくしを追いかけて、ランドセルを放り投げ、ズックの中に手に入れたおたまじゃくしを大切に持ち帰って来た息子を見て、楽しかったんだろうなと思わず笑ってしまいました。叱られなかったのでホッとしたのでしょう。テレ笑いをしながら背中の軽さに気付き「あっランドセル!」と言い、私の机の上にズックをおいてゴム草履を履いて走って行く息子に「車に気をつけてね!」と声をかけました。机の上のおたまじゃくしは8匹いました。少し弱っているのもいたので、大きなボールに井戸水を汲み上げて放してやりました。ズックの中の水も入れたので、草の葉も混ざっていて小さな池の様になりました。やがて汗びっしょりになって帰って来た息子の手には、みみずが3匹握られていました。