『思い出さがし』 91・遠足の思い出②
おにぎりとパンの交換ですっかり打ち解けたハジメ君は、ポツリポツリと家のことを話し始めました。
お父さんが週末にしか帰って来ないこと、会社が遠くなったんだよと言うハジメ君は
「パパ大変だね。」と心配していました。ママについては、少し考えがあるらしく
「どうして会社が12時まで仕事をしているの?」と尋ねてきて、
「ママの仕事は会社じゃなくて会社から帰って夕食をすませた人の所へ行って、
保険の話をするから遅いのだと思うよ。」と言うと「ママも大変やね。
会社の中で仕事できるといいのにね。」とママの味方をしていました。
忙しいママに遠足のことが言えずにいたハジメ君の優しさに感心しながら、
お便りをしっかり見るゆとりもない母親のフォローをどうしたら良いか考え込んでしまいました。
5個のおにぎりを3個まで食べて「ありがとう。おいしかった。」と言ってくれるハジメ君に
「今度の遠足も一緒に食べようね。」というと、ちょっと間をおいて
「今度は、ぼく自分で作って来るから作り方教えてほしいな。」と言うので
「今度、幼稚園でみんなでやってみようね。」と答えると目がキラキラ輝いて
「本当やぞ。指きりやぞ。」と大喜びでした。その後先生達は、おにぎり作りをたてわり活動でもする様になり、
ハジメ君の喜びは毎日の活動にも表れました。ママは相変わらず多忙で、
パパは週末に来てハジメ君を自転車に乗せて2人でハイキングに行く様になり
「園長先生のおにぎり最高やった。」と言うのを聞き、ハイキングのおにぎりは、
父と子の合作だとわかりました。