『思い出さがし』 90・遠足の思い出①
子ども達にとって遠足は心がワクワクするすてきな活動です。
前の日に雨が降ると、てるてる坊主をたくさん作って天に祈る子もいっぱいです。
中には、てるてる坊主を10個も作って幼稚園へ持って来る子がいます。
どんなにか心楽しく待っていたのだろうと愛おしくなります。でもそんな時に無情に雨は降るのです。
「あ~あ。」と言いながらその日は遠足ごっこで盛り上がります。
園をリュック背負って、ひたすら歩いて見たて遊びをする子がいます。
大きい組のお兄ちゃんを海賊に見たてて戦いを始めたり、鬼ごっこをして楽しんだりもします。
そのうち、各々のクラスが課題活動に入ると広いプレイルームやホールを中心に、
お弁当を広げたり、おやつを披露したりして、遠足気分をしっかり味わっているようです。
そんななかで一人ポツンとリュックを担いで静かにしている子がいます。ハジメ君です。
お母さんは保険のお仕事で、夜も10時を過ぎる時が多く業績も大変良いため、
会社では重要なポストにあるらしいのです。
でもその分、一人息子のハジメ君は淋しくて夜も出張中のパパが電話をしてきても、
やはりママの遅いのは辛いのです。
そして、遠足のことを言いそびれて朝はパンを一枚紙にくるんで、
ジャムを一袋持ってバスに乗り込んで来たようです。
そんなわけで、おやつもなくお弁当はパン一切れなので、
みんな輪になって嬉しそうにお弁当やおやつを広げるのを淋しそうにしていたのです。
私はおにぎりを5個作り、各々中心に梅干し、さけ、昆布、たらこ、ゆかりを入れて、
ハジメ君と一緒に食べました。パンと交換しての昼食でした。ハジメ君は3個ペロリと食べ終えました。